「なんて……ことだ……」
 困った顔をしているダークエルフの王。

「……わしの……責任じゃ」
「陛下……」
 使いの兵士が見ている。辛い表情の王。

「わしが……ほって置きすぎた、事を荒立てんようにとした結果がこれだ」
 


 ブックルの娘がさらわれた……


 この事実を受け入れられない……ダークエルフの王。
 まさか親友の娘が……


 ――なんということじゃ……なんということじゃ。
 完全にうつむいてしまった王。冷静な判断力さえ出来ない。
 すると横にいた少年が言う。

「父上……かくなるうえは……兄を葬るしかありません」
「…………」
「父上!」
 叫ぶ少年。王の息子だろうか?

「どうやって倒す? サルディーニは今や私と同等の力を持っている、王族が総がかりで行かねば倒せぬ」
「ですから総がかりで」
 答える少年王子。

「実の兄を倒せるか? 本気で?」
「やらなければなりません」
 ぐっと重い言葉を突きつける王子。
「王族の者達もみなが本気でやりあえば無事では済むまい」
「しかし……このままでは!」


 言い返す少年、そのとおりだ、このままでは……

 王座の椅子の上でなげく王……伸ばし伸ばしにしてきたむくいが今ここで来たのだ。
 ブックルは親友でもあり、大貴族でもある。
 対決すれば人間対ダークエルフにもなりかねないほどの外交問題にもなる。
 あの事件以来、この国は辛い状況にある。
 人間の女がサルンとかいうダークエルフに何人もやられているからだ。
 特に貴族の身分の娘を手当たり次第に狙っているという事実のが、
 各国の国の権力者を不愉快にさせている。



 戦争は避けたい。


 悪いのはこちらの方でもあるのだ。


 …………



 …………わしも……


 ……覚悟を決めねばならぬ……

 ……今まで放っていたむくいもある…………


 王は決心した……


「ラブゼンを呼べ、話があると」
「はい」
 側にいた側近の一人は答えた。
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