「ラゼ!――」
 叫ぶエルディーニ!

 ベッドで寝ているラゼ。どうやらここにきて、気絶したらしい。それほど体力と精神力を消耗させていた。それでも、必死に伝言を伝えにきたのだ。ブックルのお供たちには、一晩泊まってもらうことになっている。 ブックルのお供には、十分な礼をしてから帰ってもらうつもりらしい。

「ひどい疲れのようですな……」
 側にいたドクターが言う。
「にしても……なぜこのような……」
 この精神力の消耗は異常と思った医者。そのとおり、サルンが徹底的にパワーをペニスで吸い取っと結果なのだから。

「精神力をかなり消耗されています」
「……そうですか」
「休ませれば……疲れもとれ、次期に戻ってくるとは思いますが……」
 ドクターは不思議がっている。王族のラゼが、なぜ、こんな状態なのかということだ。もちろん、理由は言えない。まだ、エルフの民には、サルンと戦っているということさえ知らないのだから。

「ありがとうございました。申し訳ないが、このことは秘密にしていただきたい」
「……わかりました。そう申されるなら……栄養剤を一応はうっておきます。何かあればまた……」

 そう言ってドクターは出て行った。

 ――ラゼ……
 心配そうに見るエルディーニ。ラブゼンはちょっとだけほっとしている。

 すると……

「エルディーニ?」
 目を覚ましたラゼ。目の前に婚約者が……愛する婚約者が……

 だが、婚約者は。……サッと目をそらした!――
 肉体がそうさせたのだ。


 それに え? と思うエルディーニ王子。ラブゼンもその微妙な行為を見逃さなかった……

 ――ラ、ラゼ……
 うろたえるエルディーニ。

「お願い……見ないで」
「ラ、ラゼ……」
 抱きとめようとするエルディーニ。
「だめよ! 近づかないで!――」
 叫ぶ、叫ぶ戦乙女!

 すると、いきなりエルディーニがいきなり叫ぶ!
「どうした! 何があった!――」

「落ち着け、エルディーニ」
「ラゼ!ラゼ!――」
 今度はエルディーニが叫ぶ!
「落ち着けと言っている!」
 ラブゼンが捕まえて諭す!

 うろたえるエルディーニ! 震えるエルディーニ!
 しかし、そのエルディーニを見ないでラゼが言う。

「王にあわせてください。伝えなけければいけないことがあります」
「……わかった」
 ラブゼンは冷静だった。ラゼも今は、サルンにされたことよりも、王に報告するのが先と判断。

「後で、一緒に行こう」
「いえ……今から」
「しかし……」
 この身体で? と思うラブゼン。
「お願い、一刻もはやく……サルディーニを止めるためにも」
「そうか、なら一緒に行こう」
「はい……」
 ベッドからゆっくりと立ち上がる。その妹を、そっと抱えるラブゼン。

「行こう、エルディーニ」
「まってくれ! 話を!」
「王に会って報告するのが先だ!」
 もう一度、諭す! 怒鳴って諭すラブゼン!

 エルディーニが、ラブゼンの目を見た。その目に……思いとどまったエルディーニ。

「……行くぞ」
 そっと妹の肩を抱く。ゆっくりと三人は部屋を出て行く……
 手が震えているラブゼン。

 怒りの……怒りの手だ……

 ――おのれ……サルディーニ!!――――生かしては……絶対に生かしてはおけん!!――

 もうわかっていた……一瞬で悟ったのだ。大事な妹だ。わからないわけがいない。
 だが、今は怒りを心にためている。王に報告するために……
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