ゆっくりと気配が近づいてくる。信じられない気配。認めるわけにはいかない気配だ。その気配が近づいてくるのだ。これほど愕然とすることはない。

(どうなっているんだ……これは何なんだ……)
 気配の方へ目を向ける少年王。

「あ……」
 ラゼがサルンと同じ方向を見る。


 その方向には……黒い渦に巻かれた……
 人物の姿があった……

 まゆのように守られている……そのまゆはサルンが作ったあの黒い渦だ!

 よろけながらも、ゆっくりと近づく黒い物体。あっけに取られるサルディーニ。
 そしてその物体からの気配は、あってはいけない気配であった。

 物体の下の渦が消えていく……そこには赤いドレスが見える。
 物体の腰の辺りの渦が消えていく……そこにはあのもてあそんだ腰がある。
 物体の上半身の渦が消えていく……そこには女の証の巨乳がある。

 そして……

 物体に顔が現れた……

 そこには……

「な、なぜだ……」
 震えるサルディーニ、震えるサルン。震える少年王!

 じっと少年を見る女騎士。赤いドレスを着た女騎士がゆっくりと近づいていく……


 そして……笑った……汗にまみれながら。


 その笑みはあってはならない笑みだ。
 消えてなくなるはずの笑みであった……

「マレイアス!――」
 戦乙女が叫ぶ!

「倒してマレイアス!―――― もう、あなただけなのよ! あなただけが! あなただけが!――」
 その言葉に真っ先に反応したのはサルン!

「うぐわああああああああっ!――――」
 いっきに鬼の形相になり、マレイアスに突進していく!
 今度はじかに……直接手をくだすつもりだ! マレイアスも呼応するかのように、剣を持って向かっていく!


「うおおおおおおおおおおっ! サルン!――――」
 


 サルンとマレイアスの最後の勝負が始まる……
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