「あ〜 とんでもないのが入ってきたわね」
 イライラが募る風紀委員長。よりによって、あんな問題児が。

 さきほど挨拶が終わった翔子。
 腹に一物抱えながら。今は新人なのでおとなしそうだが。
 だが、翔子が挨拶に来て帰った後、早速愚痴が始まった。


「信じられないわ」
 委員長の横にいる二回生の風紀副委員長も不愉快そうだ。
「無視しちゃえばいいじゃないですか? どうせ、まじめにやりそうじゃないし」
 横にいる別の風紀委員が言う。

「そうもいかないでしょ。それにそれじゃ困るのよ」
 人間はルールに従って生きるのが当たり前と思っているのが御木愛だ。
 それに対して如月翔子は、ルールは私が作るというタイプだ。

 どのみちうまくいくわけがない。

「でも、本当に会長が独断で押し切ったんですか?」
 信じられないという表情の委員たち。あの会長が……といった感じなのだろう。
「私はそう見てるのだけど……副会長たちはそうは見ていないみたい」
 仕方ないという表情の委員長。疲れた表情だ。

「欄、たとえ同じ立場でも、あなたがこの役では先輩なんだから、従うように言って」
「わかったわ」
 やれやれという表情の森野 欄。この娘が二回生の副委員長だ。

 つまり……二回生の風紀副委員長は二人いることになる。

「如月翔子ね……妙な真似したら……叩き潰してやる」
 潰す気まんまん。

 こうして翔子は、二回生の風紀副委員長の二人目になったのだった。


 一方の翔子は、ある何かを感じていた。
 その何かを感じた相手は……もちろん、

 同じ二回生の副委員長の森野 欄だ。
 別のクラスの子なのだが、会った瞬間、何か匂いを感じていた。

 ――う〜ん……
 ちょっとにやける。

 ――よし、次に機会があったら仕掛けてみるか。
 何か引っかかるものがあったようだ。
 それにしても、御木愛という娘は非常にお堅いタイプらしい。
 まあ、そういうタイプじゃないと風紀委員は本来勤まらないが。

 ――ああいう堅物は、苦手ね。
 生真面目で、融通が利かない。典型的な法律こそがすべてのようなタイプ。
 その横でイソギンチャクのようにいたのが、森野 欄だ。翔子も嫌な視線を感じていた。

 いきなり自分と同等の立場に選ばれた女学生を、認めたくはないだろう。
 まして、森野 欄は一回生の頃から風紀委員を勤めてきたツワモノらしい。
 それが転校したばかりの生意気娘が、いきなり自分と同じ副委員長になるのだ。
 
 面白いわけがない。だが、そんなことはおかまいなしのお嬢様。

 ――さ〜てと……
 翔子は見回りに行くことにした。早速、パトロールがお仕事である。

 ――にしても……
 
 ――なんで私を……

 翔子が今でもわからないのは、なぜ会長は、私を副委員長に推したかだ。
 翔子には会長の心はわからないのだろう。
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