「いいわよ、上がって」
「は、はい。」
 緊張している舞。ここは翔子の部屋だ。どうやら自分の部屋に、如月舞を招待したらしい。

 如月舞……一回生。

 家は自動車会社の経営をしている。もちろん金持ちだ。

 といっても翔子の実家ほどの経済力ではないが。
 躾はきびしい家。そのためこの学園に入れられた。

 ここで立派な学生に……と両親は思っているのだろうが、この学園はとんでもないところというのをわかっていなかったようだ。まあ、見かけは選ばれた人種だけがいるという学園ではあるが。

「ねえ、何か作ろうか?」
「あ、お手伝いします」
「ふふ、いいわよそこでじっとしてなさい」
 と言って、翔子はキッチンへ向かう。すべてそろっているキッチン、きちんと片付いている。
 きれい好きの翔子は、後片付けをしないで寝ることなど考えられないのだ。

 筆者とは違う。

 舞はどきどきしている。緊張している。やはり、あこがれの人の部屋に入るというのは、そういうものなのだろう。ミキサーでわざわざミックスジュースを作って持ってきた翔子。

「楽しい?」
「え?」
「学校の生活よ」
「は、はい」
 ――ふふ、素直ねえ〜かわいい子。
 翔子がここに連れてきたのにはもちろん理由がある。自分を慕ってくれるのならば……と言うこと。
 友達や後輩は、いくらでも多いほうがいい。個人的にも舞は嫌いではない。

 ――ほんと、かわいいわね。さ〜て……どうしようかな。

 ちょっとお姉さんの余裕が出てきた翔子。どきどきしながら下を向いている舞をじっと見つめる。
「あなた彼氏いるの?」
「え?い、いませんそんな人」
 びっくりして舞が答える。そんな人いるわけないです、わたしは……わたしは……と言いたいようだ。
「あら、かわいいから男がほってないわよ」
「私、男になんか興味ありません!」
 語気を強める舞。ちょっと翔子はびっくりした。
「そ、そう」

 ――ふ〜ん想像どうりね。こういうタイプはだいたい男には……ていう感じの子が多いのよね。
 まだ翔子はここでは男友達がいない。

 だが、男はいずれ必要だ。

 あらゆる意味で……。

 ――この子からは……ちょっと期待できないかなあ〜

 翔子ぐらいの器量なら、男はいくらでも寄ってくるだろう。だが、そういう男ばかりでは困る。
 あらゆる意味で使える男が必要なのだ。トップにのし上がるためには当然の事である。
 だからと言って翔子は、汚い手を使うようなタイプではない。

 もちろん相手がしてきたら別だが。

 まずは、いろいろなタイプと知り合って交流を深めておく。

 大事なことだ。ちょっと考えて込む翔子
 だが、ここで舞から話しかけるスキが出来た。

「あ、あの……」
「ん?なに」
「す、す……」
「す?」
 翔子が不思議そうに舞を見る。


「好きです!翔子先輩!」
 その瞬間舞は翔子に飛び掛って来た!


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