二日目


 8時25分。

 寮から出てきた翔子。

 今日の制服のスタイルは昨日とはまた別。ブレザータイプには間違いないのだが、バリエーションがいくつもある。個性重視の考え方がこの学校のモットーらしい。
 もちろんわがままは別だが。

 翔子は、本音を言うと、寮か家から通うのは迷っていた。が、屋敷の中はいろいろうるさい。
 両親はうざくはないけど、やはりもっと自由がほしかったらしい。父の転勤でこの学校へ。
 
 前の無敵状態とは一味違う人間関係だ。といってもまだたった二日だが。
 知り合いも、友達もゼロ。

 ――さて……どうなることやら。
 筆者も心配である。。


 廊下ではいくつかのグループに別れて雑談している子、教室のベランダでじゃれあっている子、
さまざまだ。そんな中を翔子は、堂々と突き抜けていく。

 意に介さない!

 常に完璧を求められるお嬢様には、雑魚は不要なのだ。

 2回生3組。ここが翔子の教室。
 そう、いずれは頂点に駆け上がる土台に過ぎない所。

 椅子をスッと下げ、美しく座る。座り方までこだわる。かばんから教科書等を出す。

 出し方までこだわっている。


 一時間目は国語だ。
「こんちには、如月さん」
 にっこり微笑む女の子。あの昨日のあどけないタイプの女の子だった。
 紹介される時に声をかけた子だ。

 丸山優実。それが彼女の名前。

「こんにちは、明るいのねあなた、お名前は?」
「優実、丸山優実ですう〜」

 いきなり……ですう〜ときたか……一番翔子が嫌うタイプ。
 完璧な女性にいきなり ですう〜は気に入らない。

「丸山さんね、よろしく」
 軽く頭を下げる翔子。

 ――なれなれしいわね……まあだいたい、こんな感じの子とは思ってたけど。

「ゆうみ、おはよう」
「おはよ、ゆうみ」
 次から次に声がかかっていく。交友関係も多いようだ。

「ねえ翔子さん、どこの部活に入るか決めた?」
「ええ〜私はテニス部ってつもりだけど」
「まあ、私と一緒」
「あら」

 ――へえ〜この子もテニス部。ふふ、楽しくなりそうね。

 にやっと心の中で笑う翔子。
 だが、それは向こうも同じ。

「じゃあ今日から来るの?」
「ええ、そのつもりだけど、入部には先生の許可がいるんじゃなかった?」
 そのとうりだ。まずはテニスの顧問の先生の許可がいる。といっても普通なら何も問題はないが
「そんなものいらないわよ、聞く必要もないって」
「え?」
「ふふ……あつこ先輩の許可だけで十分よ」

 ――あつこ先輩?

「ふ〜んそうなの」
「そうよ……翔子さん、よく覚えておいてね」
 あどけない顔が微妙に不敵に笑う。その不敵な笑みに翔子は微笑返した。

 ピクッとする優実。なにかしら圧力を感じたらしい。

「ねえ、じゃあ、もうテニス部できま……あっ!」
 担任の飯田先生が来た。話し掛けて優実はその場を去る。

 ――あつこ先輩か……

 どんな人だろう。あつこ先輩と言った時の優実の表情が気になった。あの尊敬のような眼。
 あれは……匂いがすると感じた。

 いろいろありそう……ね……テニス部って。

 ――クスクス……

 心の中がちょっと明るくなる。面白がっているお嬢様。
 朝のホームルームが始まった。
 翔子はなにげなく先生を見ながら、今後の行動を考えていた。




 翔子が友達を作るのは苦手ではない。きっかけもうまい。昼頃にはもう溶け込んでいた。

 コミュニケーションが取れないと、学園を支配するのは不可能だ。

 まさにいろいろなタイプがいる。読書好きの典型的なおとなしい子、明るく活発な子、ぼけをかますのが上手な子、そして翔子と同じく、気が強く高慢で、プライドが高い子。
 徐々に力関係が見えてくる。なんとなくだが、翔子にはわかるのだ。

 そういうところは抜け目がない。

 テニス部に入ろうという意思がある事は、もうクラス中に知れ渡っていた。それでも勧誘は来る。
部活動は一つしか駄目とは限らないからだ。この部活こそが、先生の眼が届きにくい妖しい背徳に満ちた場所であり、


 女達が争い、覇権をせめぎあう場所なのである。
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