「あれ?」
 金髪の少年が不思議に思った。

 ――ここってさっきの……

 あの覗き部屋に似ている。いや、そっくりだ。

 ――おかしいな。
 妙に思うのも無理はない。確かに反対側に来たはずなのだ。
 会場の反対側に来たのは明らか。しかしこちら側にも望遠鏡のようなものとでだんなさまは覗きをしている。


「おお! お尻を発見!」
 
 リリスのお尻だ。やっとお目当てのお尻と胸を見つけただんなさま。照準を合わせて覗きを楽しんでいる。愛嬌のある顔で。なんというかまんまるいお顔がとてもかわいいというか、
 無邪気というか。
 これで40過ぎの男には見えない。さらにこの覗きという行為もいやらしく感じさせない。これはつまりミツアーウェルの魅力だ。

 ――はあ〜……
 しかしこちらはもはやあきれかえって物も言えないシミリアン。なんといおうか、怒る気にもなれない。 するとだんなさまがくるりと振り向かれた。

「どうじゃ、びっくりしたか?」
 にっこりと答えるミツアーウェル。憎めないダルマさんの顔がこちらを見ている。
「……ええ……ちょっと」
 神妙な顔つきでだんなさまを見る少年。
「このような部屋がいくつもあるのじゃ」
「え?……そうなのです……か…ええ!?」
 いくつも……ということはつまり。

 あらゆる場所からこの会場をこのように覗けるということか?

 

 ――な……なんだってえええええ?



 さすがに驚くシミリアン。最近お側に仕えるようになったばかりの少年。驚きでいっぱい。

「おお、いかんいかん、あの魅力的なお尻がどっかにいってしもうた」
 さっと望遠鏡に戻って楽しみの続きを始める。

 


 ――僕はこの方についていけるだろうか?



 自身をなくし始めた少年。ツス家の中でもっとも庶民派と聞いていたミツアーウェル
 確かにお優しい方なのだが……女性にもてる方なのだが……


 その時……


「だんなさま」
「……ん?」
 くるっと振り向くダルマさん体型のミツアーウェル。そこには別の側近の男がいた。

「ちょっとよろしいですか?」
「どうした?」
 わざわざこの部屋を探しにくるということは大事な用だと思うミツアーウェル。

ミリアム殿が御当主の意向でお話したいことがあると……」
「……なに……?」
 

 (リリパットが……なに用じゃ? こんな時間に……しかし……)
 ミリアムがわざわざくるということは……

 このような時間にわざわざくるのには何かわけがある。

「……わかった、今行く」
 リリスの身体を楽しんで見ていたミツアーウェルだが思わぬ邪魔が入ってしまった。
 カフスを着た男性的なお尻の魅力は最高だったのだが。
「丁度よいシミリアン、そなたも来るのじゃ、ミリアムを紹介しておこう」
「は、はい」
 三人はミリアムのいる部屋に向かった……
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