黒い不気味な城門……
 ここはツス家のリリパット専用の数ある別荘地の屋敷の一つだ……

 永久に続くような長さの城壁のようなものが続いている。だが、あくまで屋敷、城ではない。城と呼ばれる物を持てるのは領主とその一族だけだけなのだ。

 しかしこれはどう見ても……城に近い……そんな風にわざと作ってある。

 その正面の門から入っていったミセルバ様の馬車。さらに屋敷の奥に侵入した。

 


 
「うむ、それでよろしくお願いします」
「わかった……ところで俺も参加させてもらえるのか?」
 なにやら騎士の一人がだれかと話をしている。
「あなたももちろん予定に入っている、だからこそうまくやってほしい」
「そうか……そりゃ楽しみだな、チラッとみたが上玉のようだし。まあ、まかせておけ。しかし堂々と正面から入れるとはね」
 騎士が仮面をつけた男に言う。

「あの馬車は正面の門からではないと無理だ」
「よりによって……あの馬車をここに入れることがあるとはな、ワハハハッ!」
 笑う騎士。信じられないことが起こったと思っている。
 入ってきたのはミセルバさまが使う御馬車だ。それをほぼ強奪という形で引きずり込んだことに驚きを隠せない。アウグス家の馬車を拉致してくるという行為に驚いている。

「まあいい、うまくごまかしてやろう。どのみち、御当主からは誰も入れるなといわれている」
「よろしく、騎士長殿」
 そういって仮面をつけた男は馬車の方を振り向く。
 ゆっくりとミリアムは仮面をつけたまま誘拐した馬車に向かって行った。


「さて……と」
 馬車を見る、ミリアム。
 十人以上の黒服の男が馬車の扉付近で一人の女のまわりを囲んでいる。その間をゆっくりと歩いていく。
 


 

 ビュッ!――――
 いきなり剣がミリアムの鼻先に突きつけられた!

 

 ――ほう……さすがだな。こう言う状況で……


 馬車からものすごい形相でゆっくりと降りてきたのはリリスだった。
 顔の表情は固い……肩で息をしている……カフスの服がゆっくりと上下に動く。

 
 ……じっと見ているのだ……

 回りを、状況を……
 だが見たところで不利な状況はかわらない。


「こんばんは、リリスさん」
 仮面をつけたミリアムが不適にも挨拶をした。

「だれ!?」
 叫ぶリリス。剣を突きつけて……

「そのまま馬車からゆっくり出てもらおうか」
「…………こんなことしてただで済むと思ってるの?」

 馬車から出てきたリリス。カフスを着た美しい男性のような姿。剣の持ち方もさまになっている。
 といっても腕前は……? だろうが。

「この状況でこの冷静さ……さすがですね」
「……どういうつもり、ここはどこ?」
「それは答えかねますな」
 ミリアムの語気が強くなる。

「返して、私達を……」
「無理な相談だ」
 ゆっくりとミリアムが近づく。

「寄らないで!」
 リリスが叫んだ!

 すると……後ろからがくがく震えながら……



 ミクだ……顔が真っ青のミク。そりゃそうだ。

 リリスも恐怖はある。が、もうそんなこと言ってられない……頭の中は今の状況でいっぱい。

「剣を収めてください」
「……いやよ」
「逃げるのは無理ですよ」
 たしかに……もう囲まれている。リリスは剣を持っているが、使い手ではない。

「あなたは選ばれたのだ」
「なんですって?」
 リリスが聞き返す。

「そのお姿……よく考えられたものだ」
 何を言っているかわからないリリス。しかし押し問答をしているのにもわけがある。

「きゃあっ!」
 ミクが後ろから男に抱きつかれた。


 そのまま捕まえられた!



「ミク!」
 叫んだ瞬間だ、リリスのふところに入ったミリアムは思いっきりみぞおちにパンチをあてた!

「あっ! あうっ…………」
 リリスは格闘家でも戦士でもない、そのままあえなく倒れこんでしまう。

「リリスさん!」
 こちらも叫んだ瞬間だ、腹を思いっきり打たれて気絶してしまった。
 あえなく二人の女は倒れこんだ。

「どうします、この女の方は」
「連れて行こう、ここまで知られてしまった以上仕方あるまい」
 仮面をつけた男が平然と言う。
「わかりました」
 男達が女たちをかつぐ。それをじっと見ているミリアム。仮面の奥に光る目はこれからのことを即座に考える。

「あの馬車をかくせ、念のためだ」
「はい、しかし壊してしまった方が……」
「いくらなんでもそれはちょっとな……」
 アウグス家の馬車を壊して処分すると後々が面倒と踏んだミリアム。威厳に満ちたアウグス家の紋章に対し、壊すという行為は抵抗があるらしい。

「向こうに倉庫がある。あの広さなら十分のはずだ」
「わかりました」
 馬車を男達が引っ張って行く。


 ――さて……次は……と

 ミリアムが次の段階に向けて動き出した。
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