機会


 それから3日後。ミクと二人きりになるチャンスがミセルバに訪れる。それは舞踏会の誘いからであった。一週間後、隣の地方を治めている、グーベルという男が、自分の誕生日を祝うためにいろいろ交流のある上流階級の身分の者に、パーティの招待をしたのである。招かれて行くとなれば、当然メイドも何人か連れて行く。しかも寝室はまず個室が当然。うまく行けば……ミクだけを……。
 ミセルバはもちろん行く事に決めた。あの快感を。考えてはいけない事……でも。
 リリスを呼び出しその事を伝えることに。しかしどうすれば……。まさかミクを必ず一緒にとは言えないそういう事は、立場的にリリスか又はレイカが決めることなのだ。もちろん指図は出来る。

 でも……それをすれば。

 リリスが来るまでどういう風に言えば良いのか……馬鹿……こんな事考えるだけでも。もう嫌。

 とそんな事をしている内にリリスが来てしまった。

「お呼びでございますか?」
 椅子に腰掛けているミセルバは、ちょっと困った顔をして。
「あ、今度、グーベル男爵のパーティにお呼ばれしているのです。メイドの手配の方をお願い」
「はい」
 軽くリリスが頭を下げる。あの出来事から数日、ミセルバとあの時いたメイドの間には何も変化はないミセルバも平然を装っている。ミセルバはそれ以上なにも言わない。方法がないからだ。気づかれずにうまくやる方法などあるわけがない。

「あのミセルバ様、ミクを連れて行ってもよろしいですか?」
「え、ええ……どうして?」ミセルバの表情が変わる。願ってもないことだ。
「実はミクは以前からパーティ等に興味があるらしく、機会があれば……という事を言っていたので」
「そう、別に構わないわ」
 一瞬驚いたミセルバだったがすぐに平静を保つ。
「わかりました」
 ミセルバはビックリだ。リリスからそういう言葉が出てくるなんて。あの時から私とミクの関係を知って配慮を?

 ふう〜もうどのみちみなに知れ渡っているでしょう。

 ミク、いじめられてないかどうか……それが心配。いじめ等はだいたい隠れてされるもの。だから余計にミセルバは心配である。もちろんリリスはいじめているのではない。喜ばせてる事は間違いない。

 ミク、ミクが……でも、二人っきりにはそう簡単には。

 ううん、それだけでもいいじゃない。ミセルバはうれしくなった。その瞬間リリスが知っているとか気をきかせたとかはもうどうでもよくなっている。

 ――さ〜て、思いがけずこれはいい機会がやって来たわね。

 リリスの次の計画が始まる。
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