ミセルバM25

　こちらでは尋問というか、口止めのような話が行われている。

「わかって頂けましたか？」
「…………」
　ロットは納得が出来ないような顔だ。

　――ガッツのしたこと……うやむやにしろっていうのか。

「メイドのリリスもそのほうがためになるのではないかと思いませんか？」

　ためになる？――そりゃあ、公にはああいうことは表沙汰にはされたくはないだろうけど。

　ロットの正義感がメラメラと燃え上がる。が、燃え上がった所でどうしようもない。ロットが気に入らないのは、ガッツを攻めるのではなく、最初からうやむやにするというジボアールの姿勢が我慢ならないのだ
　おそらく、ロットがなにか下手なことを言って、おおげさになる事を嫌っているので一言言い聞かせようというのだろう。

　――リリパット様にも話は言ってるのかもしれないな。だとすれば……どうしようもないのか。

ロットとしてはこの件をうやむやにはしたくない気持ちがある。
リリスが自らの意思でそういうのならまた別だが。

あきらかにリリスの気持ちとは関係ないところで事は動いていた。

「ロット殿、納得して頂けたるかね？」

「…………」
「リリスにとってもこのまま……ということの方が良いはずじゃ」

　勝手なじじいである。だが確かに訴えたところで、ガッツはせいぜい罰金ぐらいで終わり、むしろリリスの方がここに居づらくなる。

　そして……へたをすれば……僕も危ない。　リリパット卿の機嫌をそこなえば……家にも迷惑が掛かる

　ロットは静かにそっと下を向いた。反論は、ない。いや、出来ない……という意思表示でもある。

「では、そのようにお願いしますぞロット殿」
「ええ、わかりました」
　悔しい。悔しい本当に。その瞬間あのリリスの怒りの目が思い浮かばれる。同じ気持ちになったロット。
　この時改めてロットは自分の立場を呪ったのだった。