報告


 次の日。ここはリリスの執務室。どうやら機嫌がいいらしい。めずらしく鼻歌をうたっている。昨日はモーラ達とお楽しみだったのだろう。

 さーてと、ミクはどうだったのかな?少しは変化があったのかしら?

 なんてことを考えているうちに、ミクがやってきた。
「おはようございます」
「おはよう……ん?」
 リリスはミクを見て目を丸くした。ミクの表情がやつれている。

 はは〜ん……。

 にやにやしているリリス。そうとう楽しめたようね、ミセルバ様と……ふふふ。

「あの……リリスお姉さま」
「ん?どうしたのミク、けだるそうな顔して、いいことあった?」
 わざとらしく聞くリリス。昨日ミクもお楽しみだったことはリリスも知っている。

「わたし……とんでもないことしてしまいました」
「え?」

 ――じっとミクを見る。どうしたのかしら?変ね。

 いつもの元気がない……それはすぐにわかった。


「ミク、なにかあったの?」

「お姉さま……ミ、ミセルバ様が」
「なにかあったのねミク」
「怖い……怖いんですやっぱり」
「ミク?」

 ――どういうこと?朝、ミセルバ様にご挨拶した時は機嫌が良かったからてっきりミクとは。

 メイドが朝食を持っていくのに側に付き添うのもリリスの役目のひとつでもある。

「詳しく話してみて」
「はい」

 ミクは昨日のこと、いや性格には今日の夜中のことを話し始めた。






 ――……し……信じられない!――


 びっくり……としか――


 いえないわね。

 リリスが驚くのも当然だ。マゾにしてと言ってるようなモノだ。いずれはこういう感じになるかもしれないとは思っていたリリスだった。ミセルバにはマゾの気があると踏んではいたからだ。
 いや……本来女性はみなその気があるということを聞いたこともある。

 しかし……これは、性急過ぎる。


「どうしましょうお姉さま」
「ん〜といわれても……ようはミセルバ様が求めているなら、素直に求められるまま……でいいんじゃない?ミク」
「それは、無理ですわたし」
 ますます困った顔をするミク。
「ふ〜む」
 こちらもますます困った顔をするリリス。


 だが本当は……狙っては……いたのだが。

 でも……あっという間にここまで進展するなんて……あまりにもはや過ぎる展開だ。ミク、あなたにはやっぱり不思議な力があるんだわ。わたしさえも理解できないが。

「お姉さま」
「う〜ん、ミク……何度も言うけど向こうが求めてるならどんどんいったら?それはミセルバ様が求めているのでしょう?」

 スッと下を向くミク。サディストになりきれてない顔だ。アイラなら大喜びだろう。

 わたしだって……喜んで。ミク、あなたがうらやましいわ。

 リリスは思う。しかしミクの深刻な顔をみれば思わず助けたくなる。ミクとはそういう女性だ。
「ミセルバ様とよく話してみてミク。私たちだって半分は楽しんで遊んでるし。本当にすべてを支配してというわけではないでしょう。遊びよ遊び……ね」

「でも……あの目は……こわい、です」
「…………」
 目かあ〜見てみたいわね、ミクがそれほどまでに言う……目って。どんなのかしら……でも。相当参ってるわねこれは。


 ちょっとした企みを抱いていたリリスだったが、事態は急展開してしまった。ミセルバ様をミクの愛撫のちょっと虜にして……背後であたしが。っていうのを軽い気持ちで望んでいたのはたしかだ。身分の高い方を後ろで直接ではないけど操る。快楽を使って操る。面白い……わくわくする。
もちろん直接出来るなら本望だろう・・が、選ばれたのはミク。


「ミク、わたしにされてるとき……どういう気持ちでいる?」
 スッとミクに寄り添うリリス。
「き、きもちいいです」
「焦らされた時は?」
「きもちいい……」
「じゃあ、ミセルバ様もおなじよ」
「それはわかってます……けど、けど」

 ……う〜ん……まじめねえミク。そこがまたいいのだけど。うらやましい……出来ることならそういう女性を……わたしも。


 その気になればリリスも参加は出来るだろう。リリスの話術なら簡単だ。だが、それはしたくない。ミクに対しての気持ちを裏切る事になる。

「ミク、なんだったらミセルバ様と遊ぶ時にわたしも入れてくれる?あなたが言えば逆らえないんじゃない?」
「ええ?」
 ミクの身体がピクっと動く。心の独占欲が微妙に働いたのだ。

「ほら、抵抗感持った、ね、だ・か・ら自分でなんとかしなさい」
「…………」
「あなたが望むように、ミセルバ様を満たせるようにすればいいのよ」

「でも……いいのかな」
「乱暴に扱わなければOKよ」

 …………う〜ん――そうなんだけど、でも……御領主様を……そういう扱いして。いいのかな?

 ポンっとリリスがミクの肩を叩く。

「ミ〜ク、しっかりしないと、あなたがリードするしかないじゃない。この場合は」
「は、はい」
「アイラのようにやれば面白いかもよ」
「あ……あの人たまにひどいことするし、真似したくはありません」
「はいはい」
 キュッとミクを抱きしめるリリス。
「ミセルバ様は幸せね。ミクに大事にされて」
「はいです」
 ミクはにっこり微笑んだ。


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