その頃……

 ミセルバは悩んでいた。部屋で休憩中にプルプルとお乳を震わせながら……

 ――どうすればいいの?

 悩むミセルバ。すべてを頭の中で整理をする。やることは決まっている。もし出来るならば、事件の解決を望みたいのが本望だ。しかし……

 ――親戚の方々にも迷惑をかけるわ……それに自分の立場も……

 本気でやれば、この先どうなるかわからない。まず、味方についてくれる人はいない。アーチェも無理だと思っている。というか、あのような遊び人の妹がこういうことに頼りになるとは思っていない。

 ――でも……ゆるせない! 許せないの!
 同じ女として、今回の首謀者に憤りを感じるミセルバ様。しかし、あれからシュタイン爺さんからも、決してまだ動かぬようにときつく言われた。

 リリスから聞いたのは、どこかの屋敷の地下室らしき所だということだ。もう検討はついてはいる。あそこの屋敷なら地下室ぐらいあるだろう。そして……紋章が壁にあたり一面彫られてあったということも判明した。しかし、そんなことだけでは動くのはむずかしい。

「ふう〜どうしよう……」
 18歳の乙女心が揺れている。正義感と体制の維持のことで揺れている。おっぱいも揺れている。
 これが相手がたいした人物でなければ……

 ――ツス家にも私の味方はいない……アウグス家の方々だって……
 ミセルバは特別仲のいい娘も人物もいない。ほとんど一人でいることが多いミセルバさま。父が亡くなる前からそうだった。立場上、許しあえるというお友達が出来なかったのだ。みな、表向きの人つきあいの人ばかり。
 
 それに対してアーチェ様は違う。

 遊び人は結構顔が広いのだ。好き勝手に遊びまくっているだけあって、いろいろよく知っている。まじめなタイプのミセルバ様は、そういう立ち回りもうまくない。
 アーチェさまなら、ツス家の娘とも仲がいいのである。

 城の中も本気で動けば敵ばかりだ。騎士帝長も、ジボアール議長も自分の方にはつかない事もよく知っている。そういうことは、敏感に感じ取るミセルバさま。トップにいてもそれは表向きだ。今の立場は一応はわかっている。議会なども掌握はしているといっても、飾りの上でトップにいるだけである。
 主要な人物は、まったくこういう時に一緒に動いてくれる人がいない。

 それにいくら領主でも、18歳のなりたての女領主にすぐ言うこと聞いてくれる人などいない。

 自分の味方になってくれるとすれば……

 シュタインじいさん……
 メイドの何人か……
 ロット……
 リシュリュー騎士長……
 シミリアン……

 なんてことだ。これじゃあ〜まともなのは騎士長ぐらいだ。

 悩むミセルバさま。どうしようないという想いは非常に辛いものだ。椅子に座ってひじをついて顔を覆う。

 今、ミセルバ様が思っていること……

 それはリリスとミクの仇を討ちたいということ。

 女性の尊厳をつぶされた仇を……
 一矢報いてやりたいミセルバさま。

 泣きながら話したリリスの話は、ショックであった。一人だけではなく、複数に陵辱されたのだ。ミセルバなら耐えられずに自害しているかもしれない。
 その複数の男というのも探し出したいミセルバさま。
 
 でも、解決方法がない。どうしようもない……


「どうしよう」
 リリスには必ず真相を突き止めると言った。心配していたのは逆にリリスの方だった。二人はまだ療養所にいる。

 ミセルバは立ち上がった……

 ――とにかく、証拠か何かあれば……

 考え込む。すると……

 何かひらめく。

「そうだわ……この件ではなくて……」
 何か思いついたようだ。
「別の件で調べて……それで……」
 目が真剣だ。白い色のドレスがキラッと光った。
 証拠がないなら、別の件で引っ張ってくるというのか?

 現代のどっかの国の警察がやりそうなことだ。

「まず、リリパット以外の男たちを特定するのがさきね……そうすれば……何か聞きだせるかもしれない。」
 
 考えるミセルバ。

 ――とにかく事実だけを知りたい。それでリリパットに何も出来なかったとしても……事実だけでも。
 座って考え込む。リリパットを追い詰められなくても、事実だけでも知りたい。それが今のミセルバ様の想い……

「そのためには……どうすれば……」
 自分で動くのは立場上むずかしい。自由がきかない御領主という立場。どっかの村娘の方がよっぽど自由に動ける。代わりに動いてくれる人が必要だ。
 
「ミセルバ様、ちょっとよろしいですか?」
 ロットだ。おそらく何か書類を持ってきたのだろう。
「どうぞ」
 丁度良かったと思ったミセルバさま。

 部屋に入るなりロットに近づく。立ったまま、ちょっとびっくりのロット。
「あ……あの……何か?」
「ロット、あなたは私の味方よね」
 じっときれいな瞳で見つめられる。こりゃあ〜たまらない少年にとって……この瞳は。

「え……あっ……は、はいっ! もちろんです!」
 真剣な目だ。僕を信じてくださいという目だ。
「私の代わりに動いてくれる?」
「……も、もちろんです! もちろんですよ!」
 頼りにされているのだ。凄くうれしくなる。するとミセルバが両手を掴んできた。なんという積極的な女領主。いつもはこんなことはしない。

「結構危険かもよ」
「大丈夫! 僕はあなたの男官ですよ」
 きっぱりと言い切るロット少年。男官は、相手の女性のセックスのお相手だけではない。このように裏でことも動くことがある。正義感にあふれた男だ。

 ただ、ミセルバとのセックスはしたこともない男官だが。

「私は今回のことを正式に調査することに決めたの」
「はい……」
「たとえ……首謀者に何も出来なくても……真実が知りたいのよ。誰がなんで、こういうことをしたのか……そのためには……」
 ミセルバが続ける。

「別の件でもいいから取り調べることが出来るようにしたいの」
「別の件?」
 ロットが今度は聞いてきた。
「調べたい人物の別件で何かあれば、拘束してでも……」
「別件逮捕などを使うということですね」
「ええ……こういうのは嫌なんだけど……」
 少しうつむくミセルバ。心が痛むというのだろうか?
「でっちあげの事件で逮捕なら問題ですけど、それ以外なら気にすることはないと思いますよ」
 フォローするロット。こういうのも立派な男官の役目だ。
「協力してくれるわね?」
「もちろんです! ミセルバ様!」
 グッと手を握り返す。このまま抱きしめたいぐらいだ。

 それはかなわないが。

 ロットにとっては頼りにされるのが一番うれしかった。
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