ミクが寝ている……

 だがそこに笑顔の寝顔はない。疲れきって精神が疲労したような表情で黙々と眠っている……
「ミク……」
 その寝顔を見てやはりただごとではないと悟ったミセルバ様。しかし事の詳細を聞かないと何も答えられない……

 いや……聞きたくないと言うのが本音かもしれない。

「ミク……」
 さらにじっと寝顔を見るミセルバ。ただただひたすら見続けている。

「さきほどからずっと眠っていらっしゃるのです」
 おばあさんが答えた。
「顔色が悪いわ」
 ミルミがそっと入ってきて言った。側にあった椅子に自然と座るミセルバ。
 心は……心は不安でいっぱいだ。

 ――ああっ……ミク……

 何かされていたらどうしよう……でも……もう、リリスの方は……


 ――いや! 考えたくない!!――

 心で叫ぶミセルバ様。リリスの方はもう……しかしそれを認めたくないという想いが頭を走る。

 お願い! ミクには……何もないと……願っている。
 ミクまでも何かあったら……!

 

 ……

 ……

 …………


 ………………ん……

 んんっ……?

 不安で寝ていた顔がゆっくりと目覚める……
 ミクの目が開かれた……

 赤く充血しきっている目が印象的だ。あたりがぼや〜っと見え始める。
 目の前の女領主の顔がおぼろげに……

「ミク!!」
 思わず大声で叫ぶミセルバ様!! ミクがハッとする……

 ミセルバ様を見るミク。目は赤く充血している。
 目が、目が訴えている。じっと……ある一点を見つめるミク、その先はもちろんミセルバ様。

「ミ……ミセル……バ……さま」
 起き上がるミク、その間も目をそらさずに一点だけをみつめ続ける。表情は硬く、青い。

 何かにおびえ、何かに恐怖を感じ、何かに畏怖の念を植えつけられているように……


「わあああああっ!!――――わああああああっっっ!!」

 ものすごい声で泣き始めた! 止まらない! 止まらない! ミクの泣き声!

「ミ……ミク」
 泣き叫ぶミクの声にミセルバ様の目も涙があふれる……
「ミク!!――――」

 思わず抱きしめる、ミセルバ様! 不安が的中してしまったと思っているようだ。仕方あるまい、いきなり泣き出されたら誰だってそう思う。

「わあああああっっ!!――――――」

 さらに泣きわめくミク。止まらない涙腺、止まらない涙。しかしこの涙は自分が何かされたということではない涙だ。だが今のミセルバ様には理解できないだろう。

「ミクッ!! ミクゥ!!――――」
 泣き叫ぶミクとミセルバ様。

 さすがにミルミもおばあさんも何も言えなかった。
 この光景に二人はじっと黙っているだけである。
 泣き叫んでいる二人、まるで一心同体のようにお互いに泣いている。おばあさんもミルミもどうすることも出来ない。

「リ、リリスさん! リリスお姉さまを助けて!!――――」
 突然叫ぶミク。
「ミク! ミクどうしたの?」
「リリスお姉さまを助けてください!!」
 ミセルバ様に向かって思いっきり叫ぶ!しかし、目はおびえ、首をブルブル状態。
 目の前のミセルバともはっきりとは目を合わせられない。

 

 目が逝っている――

「お姉さま!! お姉さまを助けて!!――――お願い!!――――」

「ミク! しっかりして! ミク!!――――」
 ミセルバがしっかりと抱きしめてミクを諭す!

「いやっ!!――――いやああああっ!!――――」
 抱きとめられたままその場で倒れこんでしまった……

 ――ミク……ミク!
 しっかりとそのミクを抱き締めるミセルバ様。
「ミク! しっかりして! お願い!!――」
 祈るようにミセルバ様はミクを抱きしめ続けた……

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