戻ってきたロット。ミセルバのいるお部屋に。悔しさでいっぱいだった。
「どうでした?」 
 にこやかにきくミセルバさま。それに愛想笑いで答える。

 ――くそ……

 そう思いながら、ロットは書類の整理を始める。それを見て不思議に思うミセルバさま。あきらかに不機嫌だからだ。
「どうしたの?」
「あ、いえ……」
 家庭のいざこざだ。悟られたくない。

「だいじょうぶです」
「……そう」
 それ以上は突っ込まなかった。ロットの家は、借金があるということは、ミセルバも知っている。しかし、相手も貴族の家柄だ、聞かれたくはないと思っている。

 ――間違いない、嫌がらせだ。僕を引き離すつもりか……

 書類を整理しながら考えている。突然こんなことを言うのはおかしい。だいたい、側務官から男官にするように仕向けたのはリリパットだ。それを今度は……

 ――男官をやめるかどうかは、僕に権利がある。そして、任免権は、ミセルバさまのはずだ。まるでこれじゃあ、誰が決めているのかわかったものじゃない。

 ――このままいいなりにはなりたくない。でも……

 母上は困るはずだ。
 複雑なロット少年であった。



「よくきた……」
 麗しき未亡人のような表情でミリアムを迎えるラルティーナ。緊張している青年。
「お会いできまして、光栄です」
 軽く礼をして答える。

「特別にはいまのところ……ないと申すのじゃな?」
「はい」
 ミウに報告しにいった後、今宵ラルティーナの元へ来るように言われたのだ。

 これは非常に異例のことだった。
 この数年、ラルティーナは男を近づけたことはない。30過ぎであろう肉体は、とうぶん男を受け付けていないのだ。代わりが、ミウの手淫だった。

 そのラルティーナが……

「今日は、ゆっくりとそなたと話がしたいと思っての」
「は、はい」
 横にいたミウが、香をたき始めた……妖しい匂いの香だ。

 ――や、やはり…… 
 予感がするミリアム。念のためにお風呂に入ってきてよかった。

 ではない……このままでは……泥沼だ。

 ミウが出て行った。ベッドの横に来るように言われる。もうすることは決まっている。覚悟を決めた。
 前髪を撫でられる美青年。どうやら気に入ったようだ。ラルティーナは。

「想い人はおるのか?」
「は、い……いえ」
「ほう〜本当じゃな?」
 念を押させる。

「はい」
 確かに恋人はいない。シスアはただのセックスパートナーだ。

「だったら、気兼ねせずによいな」
 そういって青年のふともも辺りを触る。ぞくっとする感覚がミリアムにくる。ラルティーナは、年齢はいっているが、魅力はある。美しく垂れた美乳は、ミセルバさまにはない魅力があるのだ。シスアよりは、よっぽどいい。


 こうして愛撫が始まる……

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