身体中が熱くなる。たいまつの火は、容赦なくミシェスタシアの身体の体温を上げていく……

 ――畜生〜やりてええ〜
 ユダバの率直な心。こんな状況を目の前にして、焦らしプレイはひどいと思っている。
 むんむんする色気が、部屋中に漂う……

「…………」
 だがリリパットは手を出さない。決して手を出さない。ゆっくりと回転し、汗が滴り落ちる人妻の身体を見ているのだ。しかし、にやけようともまったくしない。


 もう、三十分以上はたった……

 ミシェスタシアの眉が、ハの字にゆがむ。まるでセックスをしているような雰囲気に陥る。少年と、中年の視線が、身体中を嘗め回すように感じる。

 事実、側近の少年達の、視線はエロィ。

 しかし、肝心の中年男は、違っていた。
 芸術を見るかのような目で訴えるのだ。

 汗が、どんどんドレスを濡らす。じっとりと、透けるドレスは、ピタッと身体にくっついている。でも、透明にはならない。見えそうで見えない状況が続いている。

 キュッと身体が、引き締まったミシェスタシア。そして、ブルッと軽く震える。


 ――こんな……こんなこと……

 思えば思うほど、恥ずかしい。恥辱に震える肉体。乳首がピクンと勃起する。それを悟られまいとすると、さらに表情が妖しくなる。それが、またたまらない具合になるのだ。

 ――打ち所がない……なにもない。
 リリパットの正直な感想だった。これほどすべての感性を備えている女性はめずらしい。

 それをゆっくりと認識する、御当主。
 認識すればするほど、引き込まれいくのだ。この異常な雰囲気に……

 回転しながら、透けたドレスで色気を振りまく、ミシェスタシア……
 それをかたずを飲んで見ている少年たち。

 もちろん。、椅子でじっとしているだけだのだが……


 このシチュに人妻も、リリパット卿も、ミリアム以下の若い側近もただただ、虜になるだけであった。



 胸の谷間から、流れるようにすべっていく汗とライン。それをさらに惹きたせさせるおっぱいの形。
 完全というにふさわしい身体のライン……


 このミシェスタシアという女性はすべて兼ね備えているのだ。
 女性が男を惹きつけるすべてを……

 
 金貸しの連中が、夢中になるのも無理はない。


 滴り落ちる汗になりたいと思うのは男性の本能だと言われれば、そう思わざるえない。それほどの器量と色気と、雰囲気と、気品を持っている女性なのだ。

 圧倒されるほどの、女性の気品と迫力にただただ驚くリリパット。さらに、一歩も引かない気丈さが、リリパットの心を熱くさせる。



 ――なんという……なんという。

 リリスとはまったく違う反応だ。これが、身分の差というものであろう。あまりにも完全な肉体と色気は、リリパットの行動さえさえぎってしまう。


 これでは手も出せない。


 側近たちも同じ考えだった。この異常な、気品ある雰囲気に圧倒されている。汗により、透けているドレスでも、とうとういやらしい雰囲気さえ見えないようになってきた。

 まるで芸術だ。

 だが、たった一人の少年は別らしいが。

 立ち上がる御当主。立ち上がらずにはいられないのだ。


「…………」
 ひたすらミシェスタシアの身体を見つめる。だが、リリスとはまったく違う目だった。あくまで気品ある貴族の女性としてみているのだ。

 だからこそ、襲えない。
 だからこそ奪えないのである。
 

 汗をだらだらと流すミシェスタシア。身体は、エロチックに汗を流せと命令している。しかし、ミシェスタシアの気品が、それを芸術のような汗に変えているのだ。

 冷静になるリリパット。ゆっくりと椅子に座りなおす……


 グラスにワインを注ぐようにしむける。
 徹底的に欲望と、芸術のハザマで戦う事に決めたようである。
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