重く苦しい一室……

「どうやら本当のようね」
 ポポがいないことは確認済み。
「ええ……」
 ルビアとクリティーナの言葉が重い……

 執務室では重苦しい雰囲気に包まれていた。少女からもらった手紙には、「ポポをあずかっている」という内容のものだった。案内の地図と一緒に……

「どうしますか?」
 ビルバーン中尉が聞く。
「これには私に一人で来いと書いてあるわ。私が一人で行きます」
「しかし、危険だぜ」
 気遣うジト。
「私が行った後、しばらくしても帰ってこなかったときは、御領主に報告して、後の判断をして頂戴。それまでは、黙っていてほしいの」
 へたに動くとポポが危ない。
「わかりました」
 
 ――こんなことならどんなことしても城に閉じこめておくべきだった……

 後悔しても仕方がない。ポポのはやとちりは、大変なことになってきた。
 ルビアは覚悟を決めた。

 ――とにかく行くしかない。今は他に相談しても意味がない。まずは、私が行って……

 それから考えが続かない。今のルビアにはこれが精一杯だったのだ。



 またアイリーンが待っている。椅子に座って。
 今度は女軍人目当てだ。ポポは向こうで眠らされている。

「船の用意は出来てる?」
「大丈夫です、いざとなればいつでも」
 倉庫の裏は川が流れている。それでポポとルビアを手に入れたら別の場所に行くつもりだ。

「うう〜ドキドキしますね」
「いいかい、危なくなったら逃げるんだよ」
「はいです〜」
 余裕の娘たち。逃げ足だけは速い彼女たち。

 ――今度は一人では来ないだろうね。

 アイリーンがいろいろ考えている。ここからが本番だ。

「来ました!――」
 連絡にきた部下の一人が叫ぶ。
「一人か?」
「はい!」
「そうかい」
 
 ――どうせ後でぞろぞろ来るだろう。
 それがアイリーンの読みだ。

「よ〜し、気を引き締めな!―― こっからだよ! 面白くなるのは!」
「はい!――」「
 娘達が第二の作戦に出る。



 ポポと同じ場所をゆっくりと歩いていくルビア准佐。緊張する女軍人。周りの聳え立つ土壁は威厳を保つように立っている。

 ――いるわいるわ……かなりの数ね。でも、全部女の気配……

 ルビアはポポと違う。周りに舐められるように、娘達がいるのはもうわかっていた。殺気の気配を感じ取る。

「一人に間違いないわ」
「後でたぶんゾロゾロ来るというのが、姉さんの考えらしいけど」
「来るのかな?」
 城壁のような土壁からそっとルビアの行動を監視する娘達。他の盗賊娘は、後に来であろうルビアの仲間のチェックをしているようだ。

 ルビアが倉庫についた。

 ――ここね。

 おそらく結構な人数がいると踏んだルビア。どの道躊躇しても仕方がない。今は行くのみ。

 ルビアは倉庫に入っていく。腰にある剣を触る。剣を持つ手にちょっとだけ力が入った。
後ろ ルビアTOP