べドック洞窟という場所がある。この辺の森では結構有名な洞窟なのだが、あまり人は近づかない。なぜならこの森の住人のエルフがいたずら好きで悪さをする事があるからだ。エルフ達は人間が嫌いというわけでも好きというわけでもない。しかし、人間が疎ましく思うことはある。人間は家を建てるために次から次に木を切っていく。そのため住む場所が限定され狭くなっているのだ。しかし絶対数は人間の方が多い。山のふもとには大きな町が出来ており、エルフのことより自分達のわがままの方が大事だと思っている人間は多い。 エルフも人が入り込んでもその人間にちょっといたずらするくらいの程度だ。 しかし……ある少年エルフがこの森に来たことによって今……この森は変わろうとしている。 (あら、これも綺麗) 一人の少女が花を摘み取っている。ツインテールの髪型の少女。愛らしい顔だ。クリクリッとした目がたまらない。少女が好きな方ならそう思うような顔立ち。どうやらふもとの貴族の娘らしい。 (わあ……たくさん咲いてる) 辺りの森にはきれいな花がたくさん咲いている。色は白から赤系、ブルー系、さまざまだ。 幻想的な風景に包まれている。 それをそっと木の影から見ているエルフがいる。 ――かわいい……よなあ〜 それがこのエルフの第一印象だった。この少年エルフは人間の少女を見るのは初めて。 最近生まれたエルフなのだ。エルフの服装はキコリの少年のような服装。 小人の妖精のような感じと言えばいいのかもしれない。少女がにこにこと花を摘み取っている。 その様子をこそっと見ている少年エルフ。この森のエルフはみな少年の姿だ。 年齢的に10〜13歳ぐらいに見える。 ――お話したいな……でも。 仲間のエルフから人間とはかかわるなと言われている。人間は身勝手で欲張りだと言うのだ。 ――う〜ん、そうなのかなあ〜 納得できない少年エルフ。と、その時…… 「なにやってる」 一回りおおきい身体のエルフが声をかける。 「あ、サルンさん」 ビクッとする少年エルフ。サルンと呼ばれるエルフを見る。同じエルフのようだが、なんとなく肌が少しだけ黒い。黒というよりブルーの濃い感じといえばいいだろうか。こちらは年は15歳といったところか、しかしエルフの年齢は姿だけではわからない。100年生きても少年のままのエルフもいるのだ。 「かわいいよね、あの娘」 「……かわいい? 人間だぞ、あれ」 ムッとした言い方で答えるサルン。 「う、うん」 「おい、あいつ、花摘んでやがるぞ」 「いけないの?」 少年エルフがサルンに問いかける。その少年エルフの名はミックと言う。 「当たり前だろう、どうなってるんだここの連中は!」 と言ってサルンは少女に近づいた。 (こいつ……) 明らかに嫌悪感が走っているサルン。許せないという気持ちが強い。 そして何を思ったか次の瞬間…… 「きゃあああっ!」 少女が縄のようなモノに巻きつかれた。 「サルンさん、駄目だよいじめちゃ」 「黙ってみてなって」 手から触手のようなモノが伸びて少女を巻きつけていくのだ。 グルグル……グルグル……巻きつかれて行く少女。 「いやあああっ!」 叫ぶ少女。しかしどうしようもない。サルンが近づく。 「連れて行こう」 「え?」 目を丸くして答えるミック。 「俺は人間を懲らしめてやりたいんだ」 「……サルンさん」 サルンを見るミック。 「ちょっと! 離してよ!」 むかつく少女。どうやら生意気タイプのようだ。 花を摘んでいるいる時はかわいらしいと思っていたが…… 「ふん、思い知らせてやる、こい!」 「きゃあああああっ!」 突然身体が宙に浮く。もう少女には何がなんだかわからない。そのままサルンは洞窟に連れて行くことにした。洞窟はエルフたちの溜まり場なのだ。 (ええ? いいのかな、どうなっちゃうんだろう) そう思いながらも、逆らうことの出来ないミック。 ミックは心配そうに見つめながらサルンの後を追った。 |
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