今から5年前……


 ここはダークエルフの王宮神殿……ここで一つの儀式が行われようとしていた。

 皇太子の儀……この国の皇太子にサルディーニが正式に任命される日。辺りには人間とエルフが交流を交わしている。人間の国の各国の代表が招かれている。ようは親交を深める外交の一つだ。
 100人はいるだろう、みな身分の高い人間とエルフたち。そこへサルディーニが現れた。
 隣の部屋で儀式が終わってここに来たのだ。
 サルディーニの横にはダークエルフの王と王妃が一緒にいる。
 壇上に上がる三人。

「みなさま、今宵、無事に儀式の方は終わりをつげようとしております。最後に皇太子殿下に任命されましたサルディーニ皇太子からメッセージがあります」
 三人の横にいる文官の一人が客人に対して言う。

 ここで本当は決まった言葉を吐いたら終わりのはずであった……




 しかし……サルンはサルディーニは……違ったのだ。



 グッと固い決意を持った12歳の少年は辺りにいる人間に敵意を持って見る。


 そして……


「皆様方! ここで私は宣言いたします!」
 びっくりする王と王妃……台詞が違う!


「私が王となった暁には!




 ……すべての人間を従えてみせる!」
 



 力強い言葉……しかし決して言ってはならない言葉……



「な、なんだと?」
 人間の一人がその言葉を聞いて顔色が変わる!

「ど、どうしたのじゃ! サルディーニ! なにを血迷っている!」
 横にいた王が止めにかかる!

「人間はわれわれダークエルフ族に導かれてこそ、よい方向へ向かうのだ!」
「な、なんだ! どういうことだ! これは!」
 あっという間に辺りが騒がしくなる。大広間はあっという間に騒然となった!

「やめぬか! サルディーニ!」
「やめません! 父上! あなたも母上もみんな騙されているんだ!」
 さらに叫ぶサルディーニ! 

「やめよ!! ら、乱心じゃ! サルディーニは乱心した!」
 エルフの王が叫ぶ!
「みなの者! サルディーニを拘束するのじゃ!」
 周りにいた兵士がサルディーニを取り囲んだ!

「どけ! 僕は間違っていない! どけえええっ!――――」
 さらに大声をあげる皇太子殿下!
「どかないか!――――どけええええええええっっ!!――――――」



 …………


 …………そうじゃ……


 あの時は……わしも大変じゃったな……


 あれから……他の国々の要人をなだめて回ったのは……



 ブックル老人があの日のことを側近に話している。
「その話は知っていますが……それから病気で亡くなったとか聞いていたのですが……」
「うむ、実は……あれからサルディーニは幽閉された。
 じゃが……皇太子の儀式を済ましていたのはまずかった」

「まずかった?」
 聞き返す側近の男。
「うむ……実はの、これは口外しては困ることじゃが……」
 側近は興味深深だ。
「皇太子の儀式を終えたと言う事は……王族の中で王に継ぐ力をつけたということになる。それはある意味では恐ろしいことでもあるのじゃ」
「恐ろしいこと?」
 ブックルはエルフの王族の秘密について話し始めた。

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