ラゼがサルンによって凌辱されて数日…… 若き王家御一行が、王に報告している。落胆するダークエルフ王。 責任を痛感している王。 ついにラゼまでも…… 「……そうか」 「いかがしましょう? 父上……」 エルディーニ王子が今後のことを聞いてくる。それに答えられない。答えれるはずがない。方法はもうないのだから。 ――私は……取り返しのつかないことをしてしまった。 苦悩する王。頭を抱える。痛々しいものだ。しかし、苦悩してても始まらない。 今や戦乙女をモノにし、さらに力を蓄えているサルン。 「父上、ご指示ください!」 苦悩されても困るのは、こっちだ。どうやって兄上を倒すか苦労しているのは、エルディーニたちだから。 「……これは……無駄かもしれんが……」 「無駄?」 聞くエルディーニ。 「自治区へ行って見てはくれぬか?」 「自治区? ミレーユ領主がいるあの自治区ですか?」 「そうじゃ、あの……女領主に尋ねてほしいことがある」 暗い低い声で言う。 「何をでございましょう?」 「あの自治区の宝物庫の中に、過去の記憶という書物や宝物があるらしいのじゃ」 「それは知ってはいますが……」 今頃、そんな宝物を見てどうすると言いたいエルディーニ。 「そなたたちも知っているとは思うが、あそこの場所には、国の創立者エルデンの生い立ちなどが克明に書き記されている書物などがあるという。もしかすると、役に立つ物もあるかもしれん」 「…………」 戸惑うエルディーニ。今から、そんな遠回りをして……という思いだ。いまさら国の生い立ちなど調べたところでどうなると…… ミレーユ自治区という場所は、ダークエルフ創始者であるエルデンとミレーユの祖先が争い、結果的にその領地は、国内にあるのだが、自治が認められているという特別区域のことだ。 ――無駄足だろう……しかし 方法はもうない。 「行ってみてはくれぬか?」 「父上の命とあればかまいません」 「すまぬ、これぐらいしかもう言えぬ」 悲しい目をする王。悲哀に満ちている。 ――とにかく……行こう。ただ…… ちょっとエルディーニにも戸惑いがあるようだ。だが、こうしていても意味はない。王子、王女御一行は、早速自治区へ向かう事にした。 ダークエルフの自治区…… かつてここで、国の創始者エルデンとの争いで、自治を勝ち取ったダークエルフの一部の一族が、住んでいる地域のことである。この区域に住んでいる人々のことは、自治エルフと呼ばれている。 ここの現在の領主の名はミレーユ。女領主だ。 「どうした? 気が重そうだな」 ちょっと暗いエルディーニに言うラブゼン。その顔には微笑みがあった。 「……言わないでください」 「ふふ……」 実はミレーユとエルディーニは、事情があるのだ。さらにそれにラゼが絡んでいるらしい。 「とにかく、急ごう」 あれから代表として選ばれた五人の王子と王女。正式な使者として、自治区ミレーユ領主と面会することになった。大広間に案内される五人。 王の手紙を持って…… すると、少年数人に囲まれた女性があらわれた。 彼女こそ、ミレーユ領主。かつて、ラゼとエルディーニを争った女性だったのだ…… |
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