ぐったりと倒れこむ王子。さすがに疲れきっている。ミレーユお姉さまの相手は、大変そうだ。側にいる少年達も、毎日大変だろう。汗ぐっしょりの王子。

 ここで本当なら、ゆっくり愛でも語りたいところだろうが、今はそうは行かない。

「では、お願いします」
「ええ? もう〜?」
 甘えるミレーユ。もうちょっとゆっくりしたいようだ。
「待たせていますから」
「大丈夫よ、おもてなしはしてるわ」

 どうやら、簡単な宴会を用意してあげているようだ。しかし、そんなことをしている暇はない。
 サルンは、いつ動き出すかもわからないのだ。

「ミレーユ……」
 諭すエルディーニ。仕方ないといった表情のお姉さん。
「うふふ、わかったわ。急がないとね」
 本気かどうかまったく怪しい……

 重い腰を、裸のままでゆっくりと起こす。二人はいそいそと着替えて部屋を出て行った。




 自治区の宝物庫……

 そこには、書物や、財宝があるらしい。また、国の創立者エルデンのことも書かれてあるとのことだ。
 もっとも、宝物庫を見なくても、ダークエルフの歴史は、王立図書館で十分なのだが……

 ならなぜ……と王子が思うのも当然だった。

「ごくろうさま、しばらく下がってもらえるかしら?」
「はい!」
 衛兵たちが、宝物庫の前から去っていく。扉に手をかざすミレーユ。大きい巨乳をみせながら。

 不思議な光が、扉を包む……
 
 あっ……開いた。

「さあ〜行くわよ〜」
 元気そうなお姉さん。疲れているエルディーニとは大違い。

 二人はゆっくりと入っていく……


 ――こ、これは……

 びっくりしたのは、エルディーニだ。相当広い部屋だ。図書館の一室の広さがある。さらに財宝もすごい。

「ここは、領主以外入室禁止なんだけどね、本当は」
 財宝があるから当たり前といえば当たり前。
「……すごい」
「あら? あなたのアレの方がすごいわよ」
「…………」
 恥ずかしいエルディーニ。


 ――まったく……この人は……っと、そういう場合じゃない。
 すぐに頭を切り替える。しかし、どこから手につければいいのか。

 ものすごい書物の量なのだ。

「手分けして読み漁りたいのですが……」
「え? 他の者入れるっていうの? だめよ、ここに入れるのは歴代の領主だけなのよ、本当は」
 
 困った、一人ではとても……

「エルディーニ、エルデンに関する記述ならこの辺だったと思うわ」
 右の奥にある書物のコーナーを指差す。
「そうですか……」
 どうやら二人でやれということのようだ。ミレーユにとっては、そっちの方がいいのだろう。
 さっそく本を取り出すが……

 すごいほこりだ。管理体制はひどい。しかし、本は汚れていない。実は、エルフの本は、汚れないのだ。ほこりがついても紙が劣化しない特殊な紙で書いてある。そういう風な紙で作っているらしい。

 エルデンSecretという本が目に付く……

 ――エルデンの秘密……か。

 いろいろ見てみると、これはシリーズもののようだ。1〜50巻ほどあるらしい。
 これを全部読むというのも大変である。

「どう? 役に立ちそうなものあった?」
「今からですよ」
 エルディーニが読み始めた……

 そしてすぐに気づいた。

 ――なんだ……王立図書館と同じじゃないか……

 同じ文面が並ぶだけだった。ただ、書物の表紙や、タイトルがじゃっかん違うだけ。ダークエルフの民や、王族が、教科書として載っていることを、ただただ書いてあるだけだった。

 国の創立者エルデンを英雄としてたたえているのだ。かつて、邪悪な神が国を滅ぼそうとした時に、エルデンは立ち上がり、戦い、そして勝利した。

 さらに、このエルデンの話は、後に争ったミレーユの祖先に自治区を作り、うまく治めた立派な王様で終わる。これが創立者エルデンの物語だ。

 ――これじゃあ、読んでも意味は……ない。

 ふう〜っとため息をつく。
「同じなの?」
「ああ……」
 ふ〜ん、と思うミレーユ。まだ全部読んでいないのに? と思う。
 すると何を思ったのか、50巻の巻末を見始めた。

 ――こういう時ってさあ〜だいたい……

「あら、こんな記述あったかしら?」
「え?」
 ミレーユの見ている50巻を見る。

 そこにはこう書いてあった……


 ――だが、さらなる真実を知りたいものは……これを読むべし。
 そう書いてある。確かに、50巻の巻末は、こういう記述では終わらない。王立図書館に書いてあるのは、この手前で終わりなのだ。

「どういうことでしょうか?」
「番号があるわね」
 34−678−98675

 これは、本を分類する時の番号だ。

「これが続きというわけでしょうか?」
「え〜っと、たしかこれは……」
 巨乳のお姉さまが、その番号の本を探す。


「あった、コレコレ」
「ええ! だって……それ……」
 エルディーニが顔をしかめる。

 その本は……



 ポルノだった。

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