「ごくろうだった……休むとよい、いや休むのだラゼよ」
 王がラゼに言う。ボロボロの表情を見て、言うのは当然だった。

「はい……」
 一同に集まっているダークエルフの王族たち。ラゼの報告を聞いている。
 あのミレーユ領主もいる。だがミレーユは、ラゼの表情を不思議に思っていた。


 女の感だろう……


「では、失礼します」
 そう言うと、エルディーニが叫ぶ!

「ラゼ!」
 いてもたってもいられないエルディーニ! 
 ところが、ラゼは逃げるように部屋を出て行く……後を追う! エルディーニ!――

 その様子を不思議がる王族たち。

「どうしたのだ?」
 年老いた王族の一人が聞く。それに対して、冷静に言うラブゼン。
「あの二人の問題です! それだけのことです!」
 真剣な顔で言うラブゼンだった。怒りを……怒りを心にとめながら。

 悔しさが目にきている。それを見てみなが悟った……


「ラブゼンよ……ラゼは……ラゼは、まさか……」
「何もお聞きにならぬよう……お願いします!」
 王に向かって叫ぶラブゼン。その叫び声で十分だった……

「なんと……なんてこと……」
 王族の女性の一人が嘆く……

「あの……馬鹿者がああああああああああああっ!!――――」
 頭を抱える王……サルディーニはもはや悪魔である。

「それよりも、皆様方、なんとしてでも、なんとしてでも! サルディーニを倒さねばなりません!」
 語気を強めるラブゼン。
「では、先ほど決めた方法でいくのか?」
「はい!」
 方法とは、光の玉を技によって重い物質に変える方法だった。この技は、王族しかできないのだ。

 ということは……コレが……と推測したらしい。
 そういう結論に達した。

「王よ、今回はみなで、みなで行くべきじゃ!」
 年老いた王族の一人が叫ぶ!
「いや! 私、一人の追加でよい!」
「なんと! みなで力を合わせぬというのか?」
「これは命令だ、勅命である! 年寄りは私一人で十分だ!」
 叫ぶダークエルフ王!

「しかし!」
「わかっておくれ! 全滅したらどうするというのだ! 誰ももう、サルディーニを止める者がいなくなってしまうのだぞ!」

 そう言われると黙っている、みな……

「私は……責任を取る。サルディーニは私の息子だ」
 そう言うと、ラブゼンに近づいた。
「戦うときは……そなたの命に従おう」
「はい……」
「すまない……」
 頭を下げた王……ラブゼンにすまない、ラゼにすまないと思っている。


「では、皆様方、もう一度、われわれは、決戦を挑みます!」
 ラブゼンが作戦の内容を話し始めた……





 逃げるように出てきたラゼ。強気の戦乙女も、この辛さには勝てない。

「ラゼ! 待ってくれラゼ!――」
 叫び続けるエルディーニ! 逃げるラゼに対し、追いつく……

「お願い! 離して!」
「いやだ! 離さない!」
 叫ぶ! 叫ぶ二人!

 抱きとめたまま、エルディーニは動かない!
 泣いている、泣いているラゼ。もう、悟られるのをかわすことはできない。
 
 それに泣いて答えるエルディーニ……
 

 二人の時が止まっている……


「エルディーニ、ごめんなさい……」
 めずらしく、弱気な言葉だった。
「なにを言う……なにを言うんだ!」
 しっかりと捕まえて離さないエルディーニ。そして、しっかりと抱きしめる……


 しっかりと……


「兄上は……サルディーニは、僕が倒す……命に変えても……」
「エルディーニ……」 
 しっかりと抱きしめるエルディーニ。それに抱かれて答えるラゼ。
 これで一層二人のきずなは強くなっただろう。
 皮肉にも兄によって……


 ――兄上……兄上には……いや! サルディーニには……


 ――裁きを……裁きを受けてもらう!!

 復讐に燃えるエルディーニ。いよいよ、再決戦が近づく……


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