瞑想にふけっている少年が一人……


 その名は……サルン……ダークエルフの皇太子だった男だ。
 じっと、決戦に向けて待っているのか?

 ――ん? 

 目が開いた……

 ――ふふふ、来た……どうやら向こうから来たようだね……

 感じ取ったサルン。椅子からゆっくりと立ち上がる。
「来たようだ……」
「え?」
 ミシェルンが聞く。

「君達は、安全なところで見ていたまえ。マレイアス、君は僕の側にいるんだ」
「ふん、好きなようにしろ!」
 あれから、無理やり着せられている赤いドレス。、もう、散々のマレイアス。
「無理やりでも側にいてもらう」
 チラッと、ドレス姿のマレイアスを見る。

 気に入っているらしい。

「さて……と」
 ついに再決戦の時はきた……コキコキと肩を鳴らす。
 
 ゆっくりと洞窟を出て、戦場に向かうサルン。次第に、気配が強くなる。そしてこの気配に……

 ――父上がいる……
 そう感じた少年であった。




「ここか……サルディーニは……」
「はい、父上」
 王に向かって言うエルディーニ。その瞬間であった……


 すさまじい光の渦が洞窟から、ひろがる!
 その閃光に、一瞬たじろぐ王族たち。

 まさしくそこの中心に……

 サルンはいた……

 そして、その横にあの……マレイアスが……

「父上……やっとお出ましですか」
 待ちくたびれたといった表情のサルン。お互いカプセルで、宙に浮くサルンと王族たち。
 もちろんマレイアスも一緒だ。

 だが、二人の親子間には、結界が大きな壁になって立ちふさがっている。
「マレイアスどの、本当に申し訳ない……今はそれしかいえぬ……
サルディーニ……お前は……いや、もう何もいうまい」
 落ち着いて言う王。マレイアスのことも気にかけているようだ。

「父上……あなたたちのような老害の考え方はもう古い。不必要な存在だ。私は、ダークエルフの国を変える!」
「馬鹿ものが……私のおろかな行為が、そなたをこうさせてしまった……」
「いまさら自戒の念ですか、年寄りにはよく似合う言葉だ」

 あざ笑うサルディーニ。実の父に対しての言葉とは思えない。それをマレイアスはむなしく聞いていた。

「あにうえええええええええっ!――」
 エルディーニが、怒りをこめて叫ぶ! 神聖エルフの剣を握り締めて……
「ラゼはどうした?」
 平気な顔して聞くサルン。
「……あなたは……僕が倒す!」
「ふははははっ! あははははははっ!――――」
 再びあざ笑うサルン。


「エルディーニ、女は力の強いものにつき従うのが常だ。それが、世の流れというものだよ」
「兄上……」
 復讐に燃えるエルディーニ。ラゼに対する思いをサルンにぶつけている!

「父上を片付けたあと、僕は正式に王になる。従わないなら、消えてもらう」
「……馬鹿者じゃ、お前は本当に……馬鹿者じゃあああああああああっ!――」
 むなしさと悲しみで叫ぶ老いた王!
 
 次の瞬間……


 サルンと王の前にさらに電撃のような結界があらわれた……

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