鈍い痛みがサルンに走った……

 (お……あ……)
 左肩が少しえぐられる……

「う……あっ……ああっ……」
 剣によって飛び散る鮮血! サルンの表情が変わっていく……

「おおおっ……ぐはっ……」
 痛みが走るサルン。剣が……神聖エルフの剣が……

 ――はあ〜はあ〜
 悶えながらも剣だけは握っていた女騎士。サルンの狂ったような快楽責めにも、屈しない心が、剣を無意識に動かしたのだ。

 ペニスをアナルから引っ込める! 離れる少年王サルディーニ。 マレイアスは、結界の地面にあたる位置に倒れこむ!

「う……うううううっ……」
 負傷した部分は、当分再生できない。苦しむ少年。ダークエルフの王になろうとしている人物が、人間の女騎士に切りつけられた……

 二度までも……

 にらむサルディーニ、未来の后の予定人物をにらむ……

「お、おのれ……」
 怒りがこみ上げた。これほどまでに責めても、屈服しない女騎士。赤いドレスの女騎士は、快楽で狂いそうな顔を左右に振る。そしてゆっくりと起き上がった……

 穴にもぞもぞしている触手を取って……

 ぼろぼろのドレス……だが、目だけは生きている。そして、無理やり夫になろうとする少年をにらみ、迎え撃つ……

 サルディーニは方針を変えた……


 (殺す……)

 ついに決心したサルン。いままでは、殺すのは……と思っていた。后にする予定の女だ。
 しかし、 その甘さがこうなったと痛感する。

 サルディーニの目が変わる……后を、后を見る目ではない。
 敵だ、敵を見る目だ。その目に迎え撃つ女騎士マレイアス。


「マレイアス、最後の忠告だ。その剣を渡したまえ、でなければ……殺す」
「…………ふふっ……」
 笑った、笑ったマレイアス。その汗どろどろの笑みに、一瞬驚くサルディーニ。

 (マレイアス……)
 想像していない行為だった。認められない行為だった。

「そうかい……覚悟はできているんだね。僕は、嘘は言わない……それでもいいか?」
 最後の念押しだ。その脅迫にマレイアスは答えた。

「やってみな……殺すという言葉を使い始めた自分の心をよ〜く考えてね」
 その言葉にさらに怒りを覚えた美少年!

 図星を突かれたサルン。今までなら、こういう脅迫は決してしなかった。殺すという文句は使わなかったはずだ。常に相手の思考をもてあそびながら楽しんでいたサルン。

 もてあそぶ人物を殺すという行為は、道具がなくなるということだ。

「マレイアス、それをうぬぼれと言うんだ。愚か者が……」
 殺されないとでも思っているのかという表情だ。
 脅すようにサルンが、何十本もの触手を出す。


 そして、それを鋭い刃に変えた……

「きな……やれるモンなら……」
 マレイアスが言い返す。びくともしない。しいていえば、快楽の余韻に浸っているだけだ。

 立ち止まるサルン。空中結界の上下にいる両者。上にいるサルンには手を出せないマレイアス。下で迎え撃つだけだ。この結界は、人間では上れない。これでは一方的に攻められるだめだ。


「わかった……殺してあげるよ、お馬鹿さん……」
 冷たく言い放つサルディーニ。とうとう少年は決意した。
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