じたばたするサルディーニ。現実を悟った瞬間だった。それは最悪の恐怖へと変わる。

「はあっ! はっはああああああああっ!――――」
 弱気の奇声を上げ始めた少年王。じわじわと追い詰められていく状況……

「いやだ! この僕が!――信じられない!」
 さらに暴れる! だが、結界は破れない。壊せないサルン。

「……サルディーニ……」
 ゆっくりと降下させるミレーユ。最後をしっかりと見届けようというのだろう。

 点から、アリへ……アリから小さな人物へ……

 徐々に終点が近づいているサルン。その終点は、この世とのおさばらである。

「うわっ! ひういいいいいいいいいっ!――――」
 散々好き勝手やってきたむくいがきたようだ。

 これが神の意思であろうか?

「おひゃああああああああっ!――――」
 青ざめるサルディーニ。恐怖で身が凍る……

 さらに……引導を渡すのがあの女騎士だ……


 マレイアス……である。


 はっきりとマレイアスたちがみえてきた。続いてミレーユが結界の中に階段を作った。

 マレイアスを迎え入れる結界……これなら歩いていける。
 このまま、近づけて終わりという形でもよかったはずだ。だが、ミレーユはあえてそうしなかった。

 なぜ階段か?

 それは簡単だ。これが刑罰の最高刑……処刑の儀式の一つだからだ……
 手足を縛られて、処刑人が階段を昇って、処刑する。
 それが、ダークエルフの刑、最高刑の死刑というのやり方であった。


「は、はあああああああああっ! ―― いやだ! いやだああああああああっ!――――」
 わめくサルディーニ!

 皮肉にも、ダークエルフの最高刑罰の儀式で最後を迎える少年王……

 その引導を渡すのが、人間の女騎士……


 マレイアス……
 
 ゆっくりとマレイアスが階段を歩く……強い意志で……


「ひいいいいいいいっ! ひひひいいいいいいいいっ!――――」
 冷や汗だ、ものすごい汗が出てきた。最後の力を振り絞ってわめく! さけぶ!

 全身をばたつかせ、全身に恐怖を浴びながら……
 未来の王になる予定の少年が、あの世にいこうとしているのだ。あまりにも早すぎるあの世……

 その断末魔のような声を聞きながら女騎士は登っていく……
 一段、一段かみしめるように昇る。それがサルンのさらなる絶望を増大させるのだ。
 別に、ゆっくりいけといわれているわけではない。自然と身体がそうさせる。

 まるで儀式を盛り上げるように……


「おのれ! おのれ! おのれえええええええええっ!――――――」
 つばを吐きながら、罵声をあびせるように言うサルン。だが、もうこれが限界だった。

 女騎士が……ついに……少年の目の前にきた。驚愕する少年。目が震えている、顔が震えている。 身体が、けいれんしている。

 すべてが恐怖に包まれた!

「はは……はははああああっ……」
 目の焦点があっていないサルン。

「サルン、覚悟……」

 次の瞬間、サルンの心臓は貫かれた!――――
BACK NEXT TOP