等身大の大きさが入るカプセル。そこにダークエルフの死体が置かれていた。 やっとのことで、手に入れたらしい。もちろん、顔はインリではない。別人だ。 身体の大きさも本来のインリの大きさよりも大きい。明らかに年上の肉体だろう。 この肉体の魂は抜き取ってある。今は主が居ない状態。 目と手の一部がないようだ。 どういう経路で手に入れたかはわからないが。 きっとまともなルートではない。 「行くぞ……」 スイッチを入れる。カプセルが青白く光る。インリの魂を組み入れているのだ。 ランタンのようなものに入っていたインリの魂が組み入れられる。 カプセルいっぱいに煙が舞う。これで一日置いて、魂と肉体の融合が行なわれる。 インリの魂と本来のインリの骨の一部が反応して、インリに似合った骨格や、肉体に変化するというのだ。足りない部分は、追加して、そして再生されるというすぐれもの。 「終了だ」 後は明日のお楽しみ。 「うまくいくといいのですけど」 「いくさ、僕は天才だからな」 平然と言ってのける。態度がでかい。 「ライファン、インリはどこに行っていたんだ?」 「……多分」 ランカという女軍人を探しに行くと言ったインリ。それから、10日が過ぎていた。 「そこで何かあったのかもな。う〜む」 そうなると、ちょっと気になることがあるようだ。 ――死体は腐乱状態になっているはずだ。以前失敗したモノはすべてそうなった。 死人返りに失敗した肉体は、一気に腐乱するらしい。 それは魂を自分の意思で行なった場合も同じと考えているウッズ。 ――となると……当然。 調査が始まると見ている。 その予感は当たっていた。 「これは……」 老人が興味深々で見ている。これほど興味深いものはない。 「どうです?」 ランカが原因を聞く。この老人は、霊媒師。霊関係に詳しい学者さん。最初は、法医学の先生を呼んだランカ。しかし、これは霊媒関係の専門と言われて来てもらったのがこの老人だった。まじまじと保存された死体を見る老人。 「ツエペリ先生……」 いつまでたっても何も言わないので、ランカがしびれを切らした。 「おお、すまん」 やっと気がついたようだ。 「これは離脱じゃな」 「離脱?」 「そうじゃ、魂を抜き取られた後、このようになる」 一晩で腐乱死体になるのは、これしかないということらしい。 「一度死んだ人間が別の魂で蘇って、また死んだ場合の特徴じゃ」 「え?」 一度死んだ人間? 「邪法での、生き返ったまた離脱を行なうとこのようになると言われておる」 「…………」 邪法? なによそれと思うランカ。 老人先生が言う。これは一度死んだ人間を生き返らせる、死人返りという邪法らしい。 それを施して、施術し、そこに宿っていた魂が抜ける場合、普通の死体と違って、いきなり腐乱するとのこと。 「そうはいっても、初めて見るからの」 本で書かれた知識ではそうらしいとのこと。 「間違いないのですか?」 「前日はピンピンしておったのであろう?」 「ええ……」 そのとおりだ。あの顔を忘れるはずがない。 「なら、間違いないと思うがの」 髭を撫でながら言う。長い髭だ。学者さんという雰囲気がよく似合う。 ――生き返った? 死人返り? でも、それなら説明はつく。 「先生、これをエルディーニ王に話していただけますか?」 「何、王にじゃと? なぜじゃ?」 何でいきなり王が出てくると思う老人。 「詳しいことは言えません。が、必要なのです」 「ふ〜む」 いきなり王に謁見しろという。さすがに驚くツエペリ。 ――これは……もしかすると大変な事になる…… ランカに嫌な感が漂った。 「お目覚め?」 「あっ……」 目が覚めたインリ。どうやら成功だ。 「よし」 にやっと笑うウッズ。これも貴重なデータである。インリへの質問が始まった。そこでまたまた驚く。 「意識がもうはっきりしている。これはすごい」 以前は意識がはっきりするのに、一ヶ月近くかかった。最初はただうめき声だけ。 ライファンも同じだったのだ。しかし、今回は非常に早い。 「あの〜」 インリが質問する。 「なんだ?」 「身体が……」 「ん?」 不思議に思うウッズ先生。 「動かないんです」 「……なるほど」 うんうんとうなずく。 「インリ、まだ身体が自由にならないのは当たり前だと思う。以前もそうだった」 身体と意思の融合には時間がかかるのだ。しかし、今回は意思はもうはっきりしている。 「ちょっと不自由かもな。意思がはっきりしてて、身体が動かないというのは……」 「はあ〜」 「数日もすれば、徐々に動くようになるはずだ。身体はもう完全になっている。融合が済めば、思うように動かせるぞ。今度はダークエルフの肉体だし」 ダークエルフの肉体と聞いて喜ぶインリ。 「やった!――」 笑う少女。ダークエルフの肉体ならさらに安心だ。 「さて、後の世話はライファン、君に任せた。僕は寝る」 ウッズ少年が出て行った。満足顔のウッズ。自分は天才だと言い聞かせているようだ。 「よかったわね」 「うん……」 今度はダークエルフの肉体だ。インリが欲しかったのはこの身体。 ――よかった……成功して……ん? 「あ、あの……」 「身体を拭いてあげるわ」 裸の状態のインリの上半身をタオルで拭いていく。そしてライファンの唇が、インリの顔にきた。 「んんっ!――」 「うふふ、かわいがってあげる」 「ええ?」 こんな状態で? 「動けないでしょ? こんな都合がいい展開はないわ。今のうちに従順な子猫にしてあげる」 そう言って、身体を嘗め回し始めた。 「ああっ……」 抵抗するにも、身体が動かない。なんという展開。 ライファンの責めが始まった。 |
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