「え? 風紀の副委員長?」
「そうよ」
 ふふっと笑う翔子。おいしそうなケーキほうばりながら聞いている。

「でも……なれるの?」
「あら、どうして? 邪魔する者がいるのかしら?」
「多分……ね」
 情報屋の良子はもうわかっている。しかし、今さっき決まった現実までは知らない。
 まさか……強制指名権まで使うとは考えてもいないからだ。

「まあ、最終的にはどこかで落ち着くとは思うけど」
「気に入らない役ならすぐにやめるだけよ。私は風紀副委員長だからOKしただけだし」
 違う役に変わるなら拒否するつもりでもいるらしい。

「ところで翔子、風紀委員って何をするか知ってる?」
「風紀の取り締まりでしょ? それ以外に何があるの?」
「それ以外に不要な物の持ち込みの没収とかがあるのだけど」
 それがどうしたのという表情の翔子。

「やっぱりさあ〜 揉めるのよね」
 聞いてみると、風紀委員とは嫌がられる立場のようだ。まあ、翔子もわかってはいたが。

「それに風紀委員長の御木愛ってすっごい嫌われ者なのよ」
「まあ、風紀の委員長なんてやってるのはどこでも嫌われ者でしょうね」
「翔子、あなた……だって嫌われるわよ」
「どうして?」
 きょとんとしている。良子がおいおいという表情だ。

「あなた、風紀委員になるんでしょ?」
「なれたらね」
「なったら、御木愛と同じ側の人間になるのよ」
 それがどうしたという表情だ。

「わかってないの? 口うるさい立場になることが」
「そんなの建前じゃないの?」
 風紀委員になっても適当にやるつもりらしい翔子。
 翔子がほしいのは、風紀を取り締まることではなくて、立場が強くなることだ。

 う〜ん、という表情の良子。
「周りの人も、風紀委員のほとんどの人もそうなんだけど……」
「なに? 口うるさいのがいるの?」
「約……2名ほどね」

 ほうほうという表情で聞いているお嬢様。だが、そんなトラブルは平気のようだ。

「誰?」
「風紀委員長と……もう一人の……二回生の副委員長よ」
「ふ〜ん」

 ちょいと微笑む。逆に言えば、そいつらを押さえつければ……
 風紀委員は翔子の独断場ということだ。
 ケーキのおいしさをかみ締めながら、翔子は聞いていた。


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