寮の部屋


 
 結局、一番印象に残ったのは、なれなれしいあの子だけだった。
 それから翔子はすぐに寮の自分の部屋に戻った。初日は挨拶で終わりらしい。
 その後、各校舎の教室を回る。

 ――ふう〜一段落ね。


 ここは寮の翔子の部屋。完全個室制。だが、寮にしてはえらい豪華だ。
 部屋はホテルのスイートルームのように広く、マンションみたいである。こじんまりしている感じは一切ない。 学生には身分不相応かもしれないが、ここに通う生徒たちには当たり前なのだ。
 だいたい荷物等の後片付けが終わった。

 ――シャワー浴びようかな――
 少し汗ばんできたらしい。

 身体を動かしたので火照ってきた。翔子の屋敷の者を呼んでダンボールの中身等を片付けさせるのも考えていたが、なにせプライベートなモノもあるので見られたくなかったのだ。

 ゆっくり翔子がバスルームの前で服を脱ぎ始める。露になった乳房。
 
芸術品のような見事な形。

 腰のくびれ。

 芸術品のような見事なくびれ。

 キュッと引き締まったお尻。

 芸術品のような見事なお尻。

 バスルーム前の鏡の前で自らの肉体を堪能する翔子。すべてが完璧である。

 ――いつもどうりね。

 鏡の相手の顔を一瞬だけ見つめ、スッとバスルームに入っていく。


 ――私に逆らえるのは鏡のあたしだけ……ってとこかな、ふふふ。

 面白い考え方だ。シャワーを浴びはじめる。うなじから胸にかけてゆっくりと……

 
うっ、んんっ――
 どうやらいつものいけない癖が始まったらしい。乳首が起ってきた。綺麗な形だ。

 いや、今は淫らな形と言ったほうがいいだろう。
 ん?

 バスルームの中にも大きな鏡がある。全身を見渡せる鏡のようだ。これも設置するように要求したもの。
 今の翔子の淫らな姿が美しく映っている。

 シャワーのノズルをゆっくりと胸、腰……そしてふとももの付け根に向かって伸ばしていく。
 表情が徐々に色気で満ちてきた。舌をちょっとだけ出す。
 これがまたいやらしい。目が人を見下すような雰囲気に変わる。

 だが、身体の完璧さは変わらない。常にトップを求められる宿命になる女は、身体も完璧、お肌もつるつるなのである。

 ――一番は……あたし。決まっていることだわ。それも、生まれた時からね。

 いつもの口癖が始まった。自慰をする時の翔子の口癖。最高の身体にふさわしい、最高の口癖だ。

 ――身体も美しさも。誰もわたくしには勝てない……

 ――いえ……勝つことは……う、うんん……あんっ!

 ――それがルールなのよ。 他の女たちは、あくまで……

 この私の飾り……

 指をいつのまにか股に当てている。

 飾りが私を超えるなんて……許されない! 、ふふ……うあっ!――


 動きが激しくなる。鏡の翔子の顔がいよいよ赤くなる。オナニーの仕方もあくまでスタイルを求める翔子。
 美しい姿の自分を見つめ続けるためには、一時の油断も禁物だ。それは自慰行為も例外ではない。
 
女は美しくなければならない。
 強くなければならない。

 自慰の時も……

 セックスの時も……

 ――ああっ、そうよ……すべてが完璧じゃないと……

 性器の指の入れ方にまで、こだわるのも翔子のスタイルだ。どこかのエロビデオとは違う指の動き。

 
 自慰の仕方まで、トップを求めるお嬢様なのである。
 さらに、芸術を常に重んじる翔子の身体と意思。

 ――うあっ、きた……きたわ!

 性器の周りをまさぐっていた指の動きが激しくなり、性器の中に進入し始める。
 身体全体をSの字にくねらせ、エロチックさを誇張する。

 高まる性欲。
 小刻みに震える身体。
 徐々に迫り来る絶頂。

 いい……いいわ、う……美しくよ、美しく……絶頂を!――

 絶頂にいたる表情や身体のスタイル、位置にまでこだわるらしい。
 すごいお嬢様だ。

 ――ああっ、もっと……もっと!――

 ぐいぐいと両指が絡み合う。シャワーのノズルはいつのまにか下に落ちている。
 もうきっかけを作ったオナニー道具は必要ない。
 最後の美しいスタイルを極めるためには、芸術としてはむしろ不要なモノなのだ。

 不必要なら男も平気で捨てるお嬢様。

 脳裏にビクッと来るものがくる……

 ――あんんんっ……
 ビクビクビクと、翔子の頭の中に快感が走り回る。
 ――くああっ…

 この時ばかりは、スタイルや美しさを考える事は不可能と思う。
 だからこそ翔子はその寸前までこだわるのかも知れない。




 余韻に浸る翔子……裸の時はさらに大人に見える。学生とは思えない。
 事が終わった鏡の前の女を見つめるお嬢様。

 完璧だ。イッた後の表情さえ、スタイルを求めている。すごい女学生だ。

 ――はあはあ〜いい表情だわ……ふふふ。
 また一つ大人に近づく翔子だった。


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