おどろくシミリアン……そりゃあ驚くのも無理はない…… 今日ここにいるメイドの数は300人ほどだ。 その300分の1の確率に出会ってしまったのだから…… 「あ、ああっ……」 声が出ない少年。 「あら?」 チラッとリリスがシミリアンを見る。すぐにリリスはミツアーウェルの側近と気づく。というのも独特の衣装を着ているからだ。花柄タイプの刺繍がしてある服はミツアーウェルの好きな服。ほとんどの側に仕える者が同じ服を着ている。 「ど、どうも……」 いつもならすぐに気のきく言葉を出すのが得意の少年だが、さすがに今回は違った。 「恋人の方?」 リリスがミクに聞く。 「え〜……ち、違います!」 きっぱりと答えるミク。冗談でも嫌なようだ。 「うふふ、ごめんなさいねミク」 「もう〜」 ぷう〜っと膨れるミク。 「初めまして、確か……ミツアーウェル様の……」 「は、はい……」 緊張するシミリアン、これも本当は彼らしくはないのだ。 「ミツアーウェル様の毎回の心づくしにミセルバ様はいつも感心されていますわ」 「あ、あは……そ、そうですか……あ、あのミセルバ公の……」 ミセルバ様のメイドさんとは思わなかったようだ。 それにしても今日のリリスは美しい……ほろ酔いがさらにそれを強くする。 強気の美しさをかもしだしている。カフスの服がそれをさらに惹き立てているのだ。胸が魅力的に誇張されている上半身、お尻は男を惹きつけて放さない形。そして帯刀している剣。 「ミツアーウェル様、今日はもう来られないのかしら?」 「あ……あははっ……ちょっとお部屋にいらっしゃるみたいですが……」 「そう……」 態度のおかしいシミリアンを不思議そうに見るリリス。 その目が辛い……少年にとって。 「あの〜リリスさん、向こうのお花畑見に行きませんか?」 「ん?」 突然話題を振るミク。どうやら少年から逃げたいようだ。 「わかったわ、それでは失礼します、シミリアン殿」 二人は軽く一礼して去っていった…… 普通ならここで引き下がるシミリアンじゃない。うまいこと言って……が今はそんな気分じゃない。 (落ち込むよ〜……冗談だろ〜……) パチンコの確率にあったようなものだ。300人もいるのに的中してしまうとは…… シミリアンはしばらく声さえ出なかった。 |
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