部屋に倒れている…… 眠っているような二人。はたから見ると貴族の娘と美青年の男が倒れているようだ。 回りはまっくら 何も見えない…… ん? 男達が入ってきた……ぞろぞろと十人ぐらいだろうか? 部屋の壁にあるろうそくに、たいまつに火をともす……晩餐会と同じようにたいまつや蝋燭がともされるが、こちらは妖しく不気味な雰囲気一色だ。 徐々にあたりが明るくなる。ミクとリリスの姿が映り始める…… かわいいドレスを着た娘と美形の青年……いや女性が倒れているのがよくわかる。 ――んんっ……? ゆっくりと目が……開いてきた……リリス。 ――ここは? さっき腹を打たれて気絶したリリス。どうやらお目覚めのようだ。ミクはまだ眠っている。 ――男? 男達が……いる…… 今のところ思考能力はここまでだ。ゆっくりとリリスは立ち上がった。 黒い仮面に黒い衣装…… そして壁には黒い紋章が不気味に描かれている…… これは…… ツス家の紋章だ。 ――……ここは? あっ…… カフスを着こなした美しくもエロチックなリリスがようやく判断力を身につける。 すると赤黒い色の椅子に男が座っている。 どうやらワインを飲んでいるようだ。 「…………」 じっとリリスを見つめているのだろうか? 男はリラックスしているようだ。 そしてその横に…… ミリアムがいた。 「あの女は誰だ?」 「は、はい……」 どうやらミクのことで説明を求められたらしい。ミリアムが説明を始める。 「なぜ、連れてきた」 「申し訳ありません、結果的に連れてきてしまいました」 リリスだけさらう予定だったミリアム。しかし屋敷の中に入れてしまった以上、一緒に連れてきた方がよいと判断したようだ。 「……まあ、仕方あるまい、だがアレには手を出すなと伝えよ、私は無関係の人間に辱めを与える趣味は無い」 「わかりました」 椅子に座っている男に軽く一礼するミリアム。どうやらこの男、ついでにミクも……という考えはないようだ。 「あなた! だれ!!――」 叫ぶリリス、ようやく状況がわかってきた。真正面に椅子に座ってくつろいでいる男を睨む。中年の男のようだ。かなりの筋肉質…… 「だれ! だれなの!?」 睨むリリス。 「ほう……これは……」 ぽつりとつぶやく男。椅子の回りたいまつが炊かれる。美しき50すぎの肉体が浮かび上がった。 (すばらしい……最高の舞台だ) にやりと微笑むリリパット。しかしリリスはわからない。仮面をつけている男の正体が。 しかしその状況証拠ならある。それはこの壁一面に描かれた紋章だ。 まるでリリスたちを囲むように描かれているかのようだ。 「こんなことして……ただで済むと思ってるの!!」 はあはあと息をしながら叫ぶリリス。そしてキョロキョロとあたりを見る。十人ぐらいの男達がいる。 もう何をされるかはわかってきた…… 徐々に最悪の時が訪れようとしている。 「さて……」 椅子からゆっくりと起きて立ち上がった仮面の男。よく見ると…… 闘牛士のような格好をしている。あざやかな白と黄金の混じった色だ。これは本来貴族が正装として着る服の一つ。 片手にワインの入ったワイングラスを持ち、リリパットがゆっくりとリリスに近寄る…… 「寄らないで!」 剣を抜くリリス。どうやら武器は奪われていなかったらしい。といってもリリスには使いこなせるとは思えないが。逆になぜ武器を取り上げなかったのかが疑問だ。 わさと……だろう。 「なるほど……なかなかの器量もちのようだ、その気の強さ、冷静さもいい」 まるで商品を眺めるようにじっくりとリリスの行動を楽しむ筋肉質の男。そして次にワイングラスをすっとリリスに向かって差し出すようなしぐさをした。 そして一言…… 「乾杯……」 低い声であざ笑うようにリリパットは言い放った…… その行動にリリスはただただ怒りが込み上げるだけだった。 |
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