「なんですって?」
 欲求不満だった身体が一気に欲望から目が覚めた。リリスとミクがさわられたというのだ。

「はい、ただいま探させております」
 騎士の一人が報告に来ている。
「どうして、どうして!?」
 少し大きな声を出して動揺するミセルバ。なぜリリスとミクが……そういう想いだ。

「わかりませぬ、リシュリュー騎士長以下数名の者が捜索中でございます」
「……ああ……ああっ……ああああっ」
 不安でいっぱいの気持ちにあっという間になったミセルバ。もう身体はMの喜びからすっかり抜けてしまっていた。
「他の、他の者たちは……大丈夫なの?」
「はい、無事でございます」
 
 いてもたってもいられない女領主、まして大事なミクと……Mに育ててくれているリリスお姉様を……といっても動こうにも動きようが無い。

 ――ああ……こんな……こんなことって……
 ミセルバは頭を抱えてしまった……

「とにかく、探して、探し出すのです、いいですね!」
「は、はい」 
 騎士も申し訳ない気持ちでいっぱいなのだろう。これは立派な不祥事だ。

 ミセルバにとって眠れない日になりそうである。




「寄らないで!!――――――」
 剣を振って叫ぶリリス。カフスを着た美しい身体が震えている。黒服の男達は冷静だ。どっちみち結果は見えているからだ。

「どこまで持つかな……」
 のん気そうに、いや楽しそうにこの劇場を見ているリリパット。それを横目でチラリとミリアムも見ている。

 じわじわと近づく男達、ミクはもう恐怖でいっぱいだ。

 


 ――噂には聞いていたが……



 ミリアムの正直な気持ちだった。リリパットやその他のツス家の要人が、敵対した他の貴族や成り上がりの家や人間を……というのは昔からよく聞いているからだ。


 だが当事者のリリスはたまったもんじゃない。これから自分の身体が汚されようとしている。
 

 いや、それだけじゃない! ミ……ミクも……


「近づくな! 殺すわ!、殺すわよ!!」
 リリスが大声を上げた。

「さすがだな、この状況であの声が出せるとは」
 感心しているリリパット。必死なリリスに対してまるで見物しているようだ。
 仮面の奥の顔はどんな表情をしているのだろうか? 


 くつろいでいる……くつろいでいるのだこの男……

 まるでなんとも思っていない、ただのレイプ映画を見ているようだ。


 

――正直いって……怖さを感じる……

 ゾクッっと一瞬身震いがするミリアム。側にいる裏の権力者が怖い。

「拘束したらお前も参加するのだ」
 チラッとミリアムを見ながら言う。
「は、はい」
 試されている……ミリアムはそう思った。忠誠心を調べられている。正直言ってこんな背徳儀式に参加は本音はしたくない。

「芝居でないからこそ面白い」
 つぶやく。気軽な、気軽な一言だ。
「…………」
 黙っているミリアム。

「この楽しみは捨てれぬわ」
 くるくるとワイングラスを動かしながらゆっくりとリリスが堕ちるのを待っている。黒服の男達が周りをゆっくりと囲み、徐々に間合いを詰めているのだ。ミクはもうガタガタと震えている。まるで天国から地獄へ落されたような表情である。声が出ない。

 ――楽しみ……これを……楽しみと言われるか……


 ミリアムはだんだん恐怖で引きつっていった。
 怖い……怖いのだミリアムも……

 勤めとはいえ……
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