尋問


「お呼びですか?」
 不機嫌の絶頂期のような言い方でリリスが言う。
「あなた、ガッツと何かあったの?」
「…………」
 リリスの眉がピクッと動く。

 ふ〜ん、わかっちゃったのか、しゃべったのかな?

 ガッツが?――

 まさか襲いましたって――レイカに?まさかね。

「なんでそんなこと聞くのですか?」
「な〜んとなくね」
「なにもあの男とはありませんよ、メイド長様とは違いますので」
「あら、言ってくれるわね」
「ふふふ」

 双方にこやかな顔をしてはいるが、内心はお互いはらわたが煮えくり返っていることだろう。二人っきりのメイド長の部屋。さらに不気味な雰囲気が漂う。レイカがガッツと関係を持ってるのは判りきったことだ
「そう〜じゃあいいのよ」
「そうですか、それだけでしょうか?」
「ええ、それだけよ。下がっていいわ」
「はい」

 リリスはスッと部屋を出て行った。いつもならここで一言よけいな事を言うのが普通なのだが。やはりいろいろ詮索されるのが今は嫌なのだろう。


 ――何かあったわね。まちがいなくあの態度、ガッツのこの前の様子を見ても明らかだわ。

 リリスを襲いかけてから、その晩、はげしくレイカを抱いたガッツ。それとなくレイカはガッツにリリスの事を聞いていたのだ。あの時の香水の匂い。あれはまさしくガッツの匂い。だがガッツはなにもなかったように振舞っていた。

 ――まあ、いいか。いずれにしても、なにかやったんだろうなあ〜あの男。

 ガッツはメイドの中でも一番評判の良くない男だ。だがそんな男に惚れているのはレイカ。
女とは複雑である。




 ――嫌なこと思い出させないでよね!――

 不機嫌はさらに増している。自分の執務室に戻っても。一向にイライラは収まらない。怒りをさっきのレイカの尋問で増幅させてしまったらしい。

 あの屈辱は忘れることはない。絶対に……ホントにロット様がいなかったら……今頃。

 ――ロット様……


 ――ふふふっ、今日はな〜んかそわそわしてたわね。そろそろ欲望が……ってとこかな。あらやだっ。

 にやにやしているリリス。急にご機嫌になったようだ。ロット様を焦らして弄んだ事は、いい思い出らしい
 
 ――今度は……どうやって……遊んであげようか。楽しみ。

 そうそう、楽しみといえば……今日は、アイラの所で……だったわね。

 今日は月に何回かのリリスの指の虜達が集まって楽しむ日だ。もちろんミクも参加予定。

 ――でもミクは来れるのかしら……御領主様とはどうなってるのかなあ?――

 そんな事を心配しながら、リリスは机の上でたいくつな書類を眺め続けるのだった。




後ろ M編トップ