「どうぞ」
 差し出される紅茶。いや、そんな事はどうでもいい、これはお互いにとってチャンスでもある。
「あ……どうも、あ、あの……リリスさん」
「はい」
「こ、この前のことなのですが」
「あっ……」
 リリスにあの嫌な男の顔が蘇る。
あのいまわしい男のケラケラと笑う表情が。
「こ、個人的には許されることではないと、私は思うのです」
 スッと下を向くリリス。いやな事を聞かれたからではない。うれしいのである。
「ありがとう、ロット様。でも気になさらないでください」
「し、しかし」
「おやさしいのですねロット様は」
「いえ……あの男がやったことは、決してゆるんんっ」

 唇を……唇をふさがれ……た。

 スッとロットの唇を奪ったリリス。
「気になさらないで。気にかけてくれるだけでも、それだけでも本当にうれしいのです」
「あっ、は、はい。しかし……」
「あら?」
 いきり立っているモノがある。もちろんロットの下半身だ。

 ふふ……反応がいいのね。おひさしぶり、あたしのペニスちゃん。

 ライザに会って刺激され、次に目の前にリリス。これではペニスは我慢できない。リリスはガッツの件は訴えるつもりもない。やったところで意味がないからだ。それよりも……他に考えている事がある。

 ――まずはロット様を……ね。

「お慰めします」
「え?」
 と思った瞬間もうロットのペニスは、リリスに支配され始めていた。







 う〜ん悪い反応じゃなかったわよね。じゃあなんで来ないのかしら。ライザは怪訝そうだ。この二週間近くロットはペニスを見せに来ていない。そろそろライザの方がしびれを切らし、さっきのような事を言ったのだ。

 ――だがライザは知らない。

 もはやあのペニスはリリスの虜になり始めていることを。

 あ〜あ、嫌われちゃったかな?

 まあ、それならそれでもいいのだけど、な〜んか面白くないわよね。嫌われたというより、奪われたというべきかも知れない。

 ――暇よねえ、ほんとここは――

 患者もほとんどこない。決まった仕事はすぐ終わる。後は全部自由時間、だが報酬は破格だ。しかし、人間暇だとそれはそれで面白くないものだ。

 ――なにか……なにか刺激がほしい。わからないけど……物足りないのよ。

 ライザは欲求不満のようである。今夜も鏡の前でおそらく楽しむのだろう。


後ろ M編トップ