「ミ……ミセルバさま……」 まさかいきなり御領主さまにここで出会うとは思ってもみなかったリリス。 やつれているリリスの姿を呆然とみつめる女領主ミセルバ。その横にはロットとあのリシュリューもいる。 ――ミ……ミセルバって……あのミセルバ公のこと? いきなり女領主が登場して驚くのも無理はない。それもお姉さまときたもんだ。 ――メイドに……お姉さま? わけがわからなくなるミルミ。メイドになぜお姉さまなのかがわからない。ゆっくりとミセルバが近づいていく……ミセルバの方もすこしやつれている。あれから寝ていないのだ。それは横にいるリシュリュー騎士長も同じだった。 「リ……リリス!」 ガバッと抱き寄せるミセルバさま。年上のリリスの顔を抱きこむ。 ミセルバさまの胸の中でリリスは…… そして顔を見合わせる。 「リリス……いったい何があったの?」 聞きたいのはこれだ。しかし即答できないリリス。その表情からミセルバは何かを読み取った…… プルプルと震える女領主の身体。もうだいたたい何が起こったのか少しずつわかってきたようだ。怒りと悲しみがこみ上げる。 「……リリス……」 もうなんと言ったらいいかわからないミセルバ。ただただ悲しむばかり。リシュリューも何もいえない。 目を細め、大事な大事なお姉さまをみつめるミセルバ。その大事なお姉さまの顔はあの悪夢の恐怖を受けてきたのだ。 「リリス……」 もう一度声をかける、するとリリスが 「ご心配をおかけしました」 ゆっくりとした弱弱しい口調で答える。それを聞いてさらに悲しむ女領主。 「……あとで……あとでゆっくり何があったか聞かせて頂戴」 「……はい……」 言いたくはなかろう、だがここまで大事になればそうはいかない。 しばらくの間じっとみつめていたミセルバだが、 「ミク! ミクはどうしたの?」 ハッとする、次はミクの事が頭を支配する。 「……あ、あちらの部屋でお休みになっています」 おばあさん答えてくれた。 「案内してください」 「は、はい」 もうちょっとだけリリスを見た後、今度はすぐに隣の部屋に向かう。そして……リリスと…… 目が合った騎士長…… ………… …… 「申し訳ない……」 頭をゆっくりと下げてリリスに誤るリシュリュー、結果として助けることが出来なかったのだ。あれから言われたとおりにお願いという形でリリパットの屋敷にすぐに向かったが結局入れずじまいだった。 さらに戻ってきたとき、馬車がリリパットの屋敷から10キロ以上離れた小川で発見されたということを聞きつけたのだった。 騎士長の落胆ぶりは明らかだった。 リリスも軽く頭をさげた、なんとなく意味はわかっているのだろう。 そしてくるりと振り向き、リシュリューは部屋を出て行った。とてもこの場にはいられない。 ――あれって騎士長クラスよね、あの襟の階級章と服装と鎧は……なんでメイドに謝るのかしら? ますます疑問いっぱいのミルミ。よけいに人間関係がわからなくなってきた。 「あの〜あなたさまはメイドですよね?」 メイドにあなたさまと言うミルミ。 「え……あ、はい」 「…………そ、そう」 さらに困ってしまったミルミ。 ――あ! 何やってるのよ! チャンスよ! あのミセルバ公とお近づきになるチャンスよ! すくっと立ち上がるミルミ。 研究費が、研究費が……待っている。 「ちょっとミクさんという方を今度は見てくるわね」 「……あ、はい……」 いきなり立ち上がってささっと次に行きたいミルミ。 「あなたはしばらく安静にして、いい、わかったわね?」 とたんに命令口調だ、同じ平民と判明したら手のひら返しているようだ。 「ええ……」 少し落ち着いてきたリリス、しかし今はミク……ミクのことが心配。 ただただ少しでもいい結果を待っているリリスだった。 |
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