「悪い条件ではないと思うの」 「…………」 確かに好条件だ。没落貴族の少年を領主クラスの家柄の養子に迎え入れてくれるというのだ。もちろん、跡継ぎにはほど遠い身分だろうが。 「領主の養子になれるという話は悪くない話よ」 「母上……それを誰から言われたのですか?」 険しい顔になるロット。もう心当たりはある。 「ツス家御当主、リリパット卿よ」 「!――」 表情が変わる少年。 「お断りします!」 怒ったロット。母上に向かって…… 「ロット?」 びっくりするミシェスタシア。こんな態度でくるとは思っても見なかったのだ。 「あの男から……あの男からの紹介など……」 「なにを言っているの? リリパット卿には、これだけお世話になっているのよ。忘れたわけではないでしょう?」 諭すミシェスタシア。しかし、裏がありありのこの話、素直に聞けるはずはない。 ――母上、リリパットがリリスとミクに何をやったかご存知ですか? と言いたいロット。が、言えない。 「このまま御領主に仕えるよりはいい話と思うのよ」 「なぜです? なぜこの次期に? それにそんなことをするのは、おかしいじゃないでしょうか?」 「おかしい?」 確かにいきなりこんなおいしい話は、正直ありえない。それに貰ってくれる領主のメリットはまったくないのだ。没落貴族の息子など普通は身請けしない。頼まれたから……相手があのリリパットだからこそだった。ここで貸を作っておけば、向こうとしても、メリットはあるからだろう。 ――そうか……今度は……僕を…… 的中していた。さらに借金を利用されている。震えるロット。一番嫌いな方法だ。 「ロット、わかってちょうだい。あなたのためよ」 「僕のため? 僕は嫌です。僕は……」 ミセルバ様の側にいたい! とも言えない。 「とにかく保留してもらえませんか?」 「ロット……」 いつもここまでは言い返さないロットが、はっきりとここまで言うとは……と思う母。 「……わかったわ」 今回はこれで引き下がろうと思った。この強い決意に押された母親。 ――くそ……こういうこと…… ロットは悔しくて仕方がない。抑えていたモノが、一気にこみ上げた。 |
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