ふう〜落ち着いたな。 身体の汗をぬぐうガッツ。もう何回レイカを抱いただろうか?この女ならいつでも溜まったときに一発という感覚だ。 そういう目でしか見ていない男でもある。 「疲れたわ、今日は特に」 「へへっ、そうか?」 「ストレスでも溜まってるの?」 「あ、俺がか?馬鹿いうな、俺はいつも陽気だぜ」 「そう」 今日のガッツはいつもにまして激しさがあった。抱かれ方で女は分かるものだ。 「ところでな、今日は話がある」 「なに?私も気になってたのよ。突然抱かれにこい、なんてめずらしいでしょう?」 「察しがいいなお前」 拷 問室の椅子に悠然と腰掛けるガッツ。ガチャガチャと音がうるさい椅子だ。 「ちょっと耳貸せ、表にいる部下に知られても困る」 「なによ」 レイカが近づくとその身体をじろじろ見ながらガッツがつぶやく 「次の次長はどうなるんだ?」 「え?次長……次長ってメイドの?」 「ああ」 「そんなことあんたに関係ないじゃない」 「うるさいな、質問に答えろ」 「なによその態度」 睨むレイカ。チッと舌打ちするガッツ。 「まったくお前は……御領主はどういう考えか聞きたいんだよ」 「なんでそんなこと聞くの?あ、わかったジボアールがなんか言ったのね」 「ジボアール殿と呼べ、まったく平気で呼び捨てにするな」 「うるさいわねみんな嫌ってるのよ。私もだいきらいだし」 「子供みたいなこと言うなお前」 やれやれという感じでガッツはレイカを見ている。普段はきちっとした言葉遣いなのだが……今日は甘えているのかもしれない。レイカはここで抱かれた後よく甘えてくるのだ。ストレス解消もあるのだろう。 そしてレイカもガッツに聞こうとしている事がある。だが、聞いたらなんとなく終わりのような気がしてあれから黙っていたのだ。だが……今は。 ――そう……リリス、あの時の……香水の一件。 「おい!聞いてるのか?」 「リリスとなにがあったの?」 「は?なにぜんぜん的外れなこと言ってんだよ」 「香水……あなたの香水がリリスの身体にぷんぷんしていた時があったわ」 「おまえ」 香水……リリス――?まさか、あの時のことか……なるほど。 「何とか言ってみなさいよ」 ――するどいね、女ってのは…… こういう時は本当に感心するぜ。話の方向を変えられてしまって困ったガッツ。 ――仕方ない。 「リリスには逃げられちまったよ」 「あなた……まさか」 「抱こうとしたらな逃げちゃったってわけだ」 「襲ったのね」 「いや、そういうわけじゃ」 抱こうとして逃げた。それだけでレイカはすべて悟った。ガッツの性格はすべて分かっている。 はあ〜っとため息をつくレイカ。やっぱりリリスをあきらめてはいない。それどこか、力づくで……キッとガッツを睨む。 「嫌いになったか?だったら別れてもいいぜ」 強気のガッツ。その瞬間レイカの顔が少し変わった。こう言われるとレイカは弱い……なんやかんや言っても惚れているのだ。 「もう、お願いだから……あきらめて」 懇願するレイカ。少し感情的になっている。 「やっぱりそうきたか……ふふ、お前らしいな」 レイカはガッツによく突っかかるが、別れるという言葉には弱い。やはり別れたくはないのだろう。この年だ、年齢的にも生きていく上でどうしても男に寄り添って行かないときつい年齢だ。レイカもメイドの仕事がずっと出来るという保障もない。ミセルバ様は頼ってくれているが……まわりの状況はきびしい。 「リリスの事はもう忘れろ、俺が手を出すことはもうない」 「どういうことよ?」 「手を出すならもっと別の方になるだろうな」 「……?」 「おい、そんなことより次長の件教えろって」 「…………」 別の方?――どういうこと―― 疑問に思うレイカ。 「次長の座を……リリスにしたくないっていうの?」 「シスアに決まりだ」 「それを決めるのはミセルバ様なんだけど」 「決めるのはな、だが、そういう風に持っていくのはお前の仕事だ」 「なんですって?ちょっとなんであたしがそんなこと!」 そう言った瞬間ガッツがレイカの口に手で蓋をする。 「リリパット……これで十分だろう」 ――レイカの顔が変わる―― リ……リリパット――ええ?―― ――どうして?―― リリパット卿……あのリリパットが? 「詳しく話してやるよ、黙って聞けよ、それと他言無用だからな」 「ええ」 レイカがぴたりと冷静になる。この地方の民でその名を知らない者はいない。いや、知らない事はそれで罪なのかもしれない。ガッツがレイカに事の詳細を話し始めた。 |
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