ルビア達がラルクルに到着してから一週間後のことだ。

 クリティーナとジトがようやく到着。別の軍船で。
 二人ともラルクルは初めて。ラルクルの御領主は、殿下のことで王へ使者を使わしていたが、ちょうど入れ違いになったようだ。

「ま〜ったく、すごい揺れだったぜ」
「意外に酔いに弱いのね、ジト少尉は」
 クリティーナがちょっと笑っている。船酔いに苦しむジトが妙におかしかったらしい。
「苦手なんですよ、船って」
 苦笑いのジト。身体の体調も悪い。すべては船酔いのせい。
「さて、行きましょうか? どこにあるのかしら?」
 軍の駐留所へ行きたいのだが、どこにあるかがわからない二人。一緒に連れてきた部下たちもわからないらしい。ルビアの時は、案内役が向こうから来てくれたのだが、この二人が来ることは軍は知らない。王妃の手紙と命令書だけを持ってきたようだ。

 さらにラルクルは二人とも初めて。

「まさかこのカッコで軍の駐留所はどこにありますかって聞けるわけないしなあ〜」
 ジトも困っている。
「仕方ないでしょ、聞くしかないわね」
 軍服着て、軍の場所を聞くというのはおかしな話しだ。
 だが、迎えなどは来ないからどうしようもない。
「おい、水兵の連中も知らないのか?」
「ちょっとお待ちを、尋ねてみます」
 兵士の一人が聞きにいく。その時だ、

「追い詰めたぞ!――――」
 数人の騎士が二人の娘を囲んでいる! どこかで見たことのある二人の娘。


 あの二人組みだ!――

「ちょっと〜やばいよコレ」
「う〜ん……」
 冷や汗状態の二人。
「おい、同行してもらうぞ」
 騎士の駐留所へ連れて行くらしい。いろいろ嗅ぎ回っている、アイリーンの部下たち。
 ひょんなことからこの騎士たちに目をつけられたらしい。妖しいと判断したようだ。二人の目が鋭くなった。どうにかしてココを逃げ出さないといけない。

 ――お、グリーン騎士かよ。ちょうどいい。

「お〜い、ちょっと教えてくれ〜」
 そこにジトがあらわれる。のん気なジト。コッチの事情を知らないらしい。
「だれだ?」
 見慣れない軍人がやってきてちょっと戸惑う騎士たち。それを二人の娘は見逃さない!

「そ〜れ!――」 
 ものすごい煙が一気に舞い上がった!

「うわわわっ!!――――」
 バシュッという音と同時にモクモクと巻き上がる噴煙。息ができずに苦しむ騎士たち!

「な、なんだ?」
 ジトもびっくりだ。いきなり港の一部が煙だらけになった。もちろん二人はもういない。

「ちくしょう! 逃げられた!――――」
 追え! という支持を仲間に出す。一斉に探し回る騎士たち。だが、もう手遅れだろう。

 ――取り込み中だったのか。やばいな……
 うらめしそうにこちらを見ている騎士の一人。
 
「何用だ」 
 逃げられてジトに八つ当たり気味のようだ。
「すまないな、邪魔したようで」
 笑いながら謝るジト少尉。
「見慣れない顔だが……もしかしてルビア殿の配下の者か?」
 まだ不機嫌のようだ。
「おお、そうそう、ルビア准佐がおられるところ、教えていただけないか? 恥ずかしながら、ここの土地に詳しくないのでね」
「わかった……案内してやる。ただし、もうちょっと待ってほしい」
「ああ、お願いするよ」
 もう一度作り笑いするジト。悪いと思っているようだ。そこへクリティーナ少尉もやってきた。

「初めまして、クリティーナといいます。よろしく」
「……よろしく」
 なんとなくそっけない騎士さんだ。まあ、逃げられたせいもあるかもしれないが。騎士は仲間が戻ってくるのを待っている。しばらくすると仲間が戻ってきた。

 よく見ると、全身グリーン色の鮮やかな騎士の姿。 それがこの騎士達の特徴だ。
 名づけてグリーン騎士。人はこの騎士達を緑の騎士と呼ぶ。

 それを見てジトが一言。

「あれが噂のグリーンナイトかい」
「ええ……」
 ジトが戻ってきた仲間と会話している騎士たちをじっと見ている。


 ――バルカン王国の中でもっとも権威があると言われるグリーンナイト……

 ――そして、そのプライドを傷つけると、もっともやっかいな連中……

 軽くため息をつくジト少尉。
 そのため息は今後を占うのにとても重要な意味を持っていた。
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