数日後……

「殿下は?」
 久々に殿下に会いに来たルビア。意図的に会わないようにしていたのだ……
「ちょっと庭で遊んでいるみたいですわ」
「そう……ご挨拶しようと思ったのだけど……」
 もうすぐこのお城とポポとも、しばらくお別れになる。正式に命令が王より王妃を介して出た。これで堂々と地方での活動もしやすくなる。情報では、盗賊団はあちこちに出没しているらしいとのこと。といっても、それが全部目狐ではないが。

「最近元気がなかったのよ」
「あら、そうなの?」
 クリティーナと会話しているルビア。殿下はさみしいとのことだ。それを聞くとちょっとだけ同情する。 しかし、これ以上身体をもてあそばれたら大変なことになる。禁断の行為は、もう慎みたいのだ。
 身体の方は、夫に抱いてもらって今は満たされているルビア。

「じゃあ、庭に行ってみるから。後はよろしく。これからがんばって、少尉」
「はい、御武運を……」
 敬礼するクリティーナクリティーナとジトはここに残ることになった。代わりにルビアの側には、以前共に一緒に働いた男女が副官としてつくらしい。

 ジトとクライシス外交官とはもう挨拶は済ませた。あとは、ポポだけ。
 ルビアはポポの元へと向かっていく。



「……うんうん」
「でな……」
 なにやらよからぬ相談をしている少年が二人。ポポとラミレスだ。

「そうなのかよ」
「だから……な?」
 何を話しているのだろうか?

「わかった……」
 ポポがなにやら決意を固めている。ポポはまだ、ルビアと一線を越えたことをラミレスには話していない。ラミレスがルビアにちょっとだけ好意を持っているので遠慮しているのだろう。悪友にもさすがにこれは話せないらしい。といってもあの媚薬を渡したのはラミレスだ。ポポも28歳の肉体に興味を持っていることは知っている。

「殿下……」
 その28歳の人妻が現れた。いきなりのご対面におどろく二人。
「やあ〜久しぶりだね、元気していた?」
 ポポが澄ました顔で言う。本当はちょっとさびしいはずだ。
「ご挨拶に伺いました」
「うんうん……」
 にっこり微笑むポポ。もうさよならが近づいている。しかし顔は冷静だ。
「でも、警護役はやめないよね?」
「え、ええ……兼任となっておりますので」
 確かに警護役ははずされてはいない。しかし側にいないというのは、事実だ。

「そうか……がんばってね、盗賊退治」
 いやに素直である。
「は、はい……」
 敬礼するルビア。ちょっと意外ではある。ここでだだでもこねると思っていたからだ。

「そうかあ〜さびしくなるよなあ〜」
 逆にラミレスは少しさびしそうだ。
「また機会があればお会いしましょう」
 にっこりとルビアが笑う。
「では、失礼いたします」
 と言ってさっさと去っていくルビア。この毅然とした態度が、一番と思ったのだろう。

「さよなら〜」
 ポポとラミレスがにこにこと手を振る。まったく冷静のポポ。もう一度振り向くルビア。そして軽く一礼した。

 ――変ね……妙に冷静だったわ……

 何も抵抗もせず、素直に受け入れている殿下……ルビアがおかしいとも思うのはよくわかる。

 すると……

「またね〜ルビア〜」
 大声で叫ぶポポ。
「え?」
 びっくりしてもう一度振り向く。
「ん? どうかしたの〜?」
 手を振りながら言うポポ。

 ――空耳……?

 確かに……またね、と聞こえたのだが……

 再び進行方向に振り向いたルビア。

「……さ〜て、これからいろいろ面白くなってきそうだな」
「ラミレス、協力してくれてありがとう」
「……お礼はうまく行ってからでいいさ。あ、うまくいったらお礼言えないのか……」
 にっこりと笑うラミレス。それにポポも答える。
「僕は皇太子だ、正義のために行動しなければならないんだ」
 何かに酔っている? いきなり正義という言葉が出てきた。
「畜生、面白そうだよなあ〜」
「君もくる?」
 誘う皇太子。

「いや……さすがに、それは……ね。それよりうまく事を運ぶこと考えないとな」
「うん……よろしく頼むよ、平民たちの安全と正義のために僕も動かないといけないし」
「いきなり、えらそうになったな、お前」
 お互いに笑う少年。

 少年たちの新たなる計画が動き出した。
後ろ ルビアTOP