「うわあああっ!こりゃひどい……」

 ここはラミレスの屋敷の中。想像以上に荒らされていた。部屋のほとんどがめちゃくちゃにされている。

「ちくしょう!あいつら一体何者なんだ!」
ラミレスが怒りに震える。

「ぼっちゃま!ご無事ですか!」
 メイドのおばあさんだろうか?泣きながらラミレスに擦り寄ってきた。

「僕は大丈夫」
「よかった本当に、ああっ、殿下もご無事で」
「うんうん」
 ポポもにっこり答える。町の警護の役人や軍人、兵士が入り乱れて捜査をしている。この場所だけでなく殿下が襲われた場所もだ。

 ――いや……正しくは、殿下では……


 あの者たち……あの大男……

 ルビアはちょっと考えていた・・

「准佐!」
 くるっとルビアが振り向く。

「おお、殿下も!ご無事でよかった」
 ジトだ。やっとこの場所に来たらしい。あれからクリティーナとジトは他の者たちと黒服の連中を、殿下を探していたのだ。

「よう、どこ行ってた?」
 いやみだろうか?殿下らしいかわいい言い方だ。

「はは、言われますな殿下、ん?その傷は」
「大丈夫気にするな、僕はこれぐらいでへこたれたりはしない」
「わかりました」
 ジトが軽く頭を下げる。

「しかし、なんでラミレスさまのお屋敷を」
 正確にはラミレスの父上の屋敷だが……

「殿下を探して荒らしまわったのだろう」
 とルビアは答えた。だが……

 ――もしかすると――


「とにかくお城へ戻りましょう」
 ジトが言う。

「うん、でもここどうする?」
「気にするなって僕がいるだろう。ここは僕の家だ」
 ラミレスの家も金持ちだ。当分は大変だろうけど修理費用はこの家にはそう苦にはならない。
「すまない」
「なに言ってるんだよポポ、そんなことよりお前狙われたんだぜ」
「うん……」
「やっぱ身分がありすぎると怖いよな」
「うん」
 ポポも少しは怖さを思い知ったらしい。だが横で聞いていたルビアは納得はしていない。

 ――殿下?ちがうちがう。

「とにかくお戻りをここは危険です」
「うん」
 ルビア、殿下、ジトは城に向かっていった。気になる気になる。

 ――まさか?


 ルビアの嫌な予感――

 それはまさに的中していたのだ。




 城から戻ったら大騒ぎだった。殿下が行方不明と伝わっていたからだ。ご無事が確認されると真っ先に王妃がかけよった。
「おお!ポポ!」
 人一倍親ばかで知られるリアティーナ王妃。泣きながらギュッとポポを抱きしめる。女性の地位向上をめざしている王妃、普段は泣くことなど考えられない。
 だが、行方不明と聞いてそのショックは大きかった。逆に無事だというギャップが涙を誘ったのだろう。

「そなたたちよくぞ……よくぞ守ってくれた」
 ルビアたちが敬礼する。王妃はにっこりと答えてくれた。

 ――ふう〜いろいろあったけど……とにかくご無事でよかった……。

 ルビアはポポの元気な顔を見てそう思う。
 だが……

 気になることがある。黒服の者たちの目的――

 ――本当に殿下を?

 それと……あそこ、不思議なところだったわね――

 洞穴がなんとなく気になっているルビア。だが、殿下がご無事というだけで今はよかったと言うべきだ。
 王妃はいつまでもポポを抱きしめていた。




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