「ジト、あなたのその推測はおそらく当たっている」
「そうか」
 ルビアとジト。二人が真剣に話を交わしている。コーヒーを飲んでいる二人。
 ルビアのはあの媚薬効果入りの砂糖を使って。

「どうする?このことを少将殿には」
「証拠もない、だから言わなかった、しかし」
 ルビアがちょっと下を向いた。

「お前も同じように感じたのならこのことは言った方がいいのかも知れない」
「いや、言うなら王妃様だけがいい」
「?」
ルビアがジトを見る。
「ゼット少将はなんとかして准佐殿を排除しようとしている」
「…………」
「あの方は男性至上主義だからな」
「それは知っている」
 ゼット少将は女が軍人どころか女が働くということ事態に疑問を持っている男なのだ。当然王妃とは意見がまったく違う。

「心当たりがあると言われるなら王妃様に直接言った方がいいと思われます」
「うん、そうしよう。ところでなんで相手が殿下でなくてこの私を……だと」
 ジトがちょっと下を向く。
「じつは……これも言いにくいのですが」
 ちょっと神妙な顔になるジト。かなりつぎの発言は重要だということを意味している。

「今日、賊とやりあったときに……知っている人物に会ったような気がするのです」
「知っている人物?」
「メルビン大尉ですよ准佐殿」
「メ、メルビン!?」
 目を丸くするルビア。

 あのメルビンが――

「知り合いって程度のものですけど、なんとなく……ね」
 ジトが言うにはこうだ。ルビアとポポが逃げた後、数人の黒服たちとやりあった。そしてそのうちの一人が女はどこだ!と叫んだのだ……その叫び声がメルビンのような気がしたというのである。もちろん黒服なのでほぼ姿は見えない。
 しかしなにかを感じ取っていたジト。その男はジトとちょっとやりあって、大男と一緒にルビアたちを追っていったという。つまりこの発言どうりに推測すればルビアを狙っていたことになる。

「メルビンはまったく姿を見せていないのか?」
「ええ、突然いなくなってこれっきり」
「メルビンの身元保証人は?」
 ルビアが問いかける。身元保証人とは役人等の官職につく場合、身元を保証する人間のことだ。多くは貴族がなる。貴族はその保証人なる代わりに手数料をもらうという仕組みだ。

「それが……どうやら王族の方のようです」
「王族?」
 再びびっくりするルビア。王族が軍人になる人間の保証人になるなんて信じられない。貴族の身分の者を保証するならともかく。
「いや、保証人というより意向と言ったほうがいいのかもしれません」
「特例……ということ?」
「ええ」
 それでも信じられない。メルビンが特別な身分の者なら別だが……だいたい貴族だったら平民の仕事である軍人になどならない。守ってもらう立場なのだ。
「メルビンは何者だ?」
 ルビアはますます気になり始めた。




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