「ここか……」
 ランカがつぶやく。森の入り口に来たランカたち。彼女達はこの森では迷うことはない。
 しかし結界を張られたらそこからは結界を破らなければ先に進めない。

「森は包囲しました」
「やっても……ここからは何もできない……」
「確かに……」
 横にいた副官の男が同意する。彼らでは結界を突破はできない。
 出来なくても結界ぎりぎりまで行くことにしようと思っているランカ。

 それにしてもこのダークエルフの女軍人は背が高い。そしてお尻の形が魅力的だ。
 兵士の中にも女性の兵士はかなりの数を占める。だが一際目立つのがこのランカだ
 ローマの衣装のような軍服。柔らかい鎧のようなモノが身体全体を包んでいる。

 下半身が魅力的に見えるように作られている衣装だ。腰にサーベルを抱えている姿はまさしく軍人。 頭には軽い材料で作られたかぶとのようなモノをかぶっている。

「行こう、とにかく結界ぎりぎりまで……また逃げるのを黙って見ているだけだとしても……」
「……ええ」
 副官が言う。どことなくあきらめ顔だ。
 森を囲みながら結界に迫っていくダークエルフの軍人達であった。






「くはっ!」
 投げ捨てられるように拘束されている部屋に連れて行かれるマレイアス。

「ふふ、後は夜まで休んでな、サルンさまが待ってるからね」
 数人の女ダークエルフがくたくたになっている汗まみれのマレイアスをセイキンの元へ連れて来た。
「…………」
 じっと見ている……セイキン。ぐしょぐしょになった布の服。いやらしいにおいでいっぱい。

「この服にでも着替えさせてやりな」
 ローマの軍人のような服だ。赤い軍服の服……。下半身はスカートタイプのようだ。

「…………」
 何も言わないセイキン。
「じゃあね、ゆっくり休みなよ、夜はサルンのお相手だよ、その服で……わかってるね?」
 ちょっと笑う女ダークエルフ。

 女ダークエルフは去って行った。


「くそ……」
 むかつくセイキン……頭にくるがどうしようもない。

「うう……」
 ちょっとうめくマレイアス。もう何回無理やりイカされたことか……頭の中が真っ白だ。
 そのまま……深い眠りについた……疲れているのだろう。

 ――マレイアス……

 セイキンはじっとただマレイアスを見つめていた……。
 それが精一杯だった。






「ここまでだな」
「ええ」
 強力な結界……サルンが作ったモノだ。電磁波のようなモノが飛び交っている。
 中には入れない。ちょうどエルフ達の洞窟の入り口にあたる。

 その時……

「やはり君か……」
「サルン様!」
 ランカが叫ぶ!


 浮いている……サルン。結界の中で。
 そしてなにやらカプセルというか水晶のようなモノの中にいる。

「ランカ……君も大変だね」
「お帰りください! サルン様! そして裁判を受けてください!」
 ランカがさらに叫ぶ。
「ふふ、毎回毎回同じことの繰り返しかい? もう飽きたよ」
「サルン様!」
「それより久しぶりに君と遊びたい、こっちに来て」
 ビクッとするランカ……身体がピクッと動く。防衛本能が働くランカ。

「ふふふ、嫌かい?」
「…………」
 ちょっと険しい顔つきでサルンを見るランカ。
「サルン様、もうおやめください」
「嫌だね、人間の女は徹底的に犯してやる」
「サルン様……」
 諦め顔のランカ。

 ゆっくりとランカに近づくサルン。気品のある少年の顔に少し不敵な笑みが出る。
 あきらかに狙っている。ランカを……

 しかしランカは逃げようとしない。いや、逃げられないのか?

 蛇に睨まれたカエルのように……

 ビュッ!!――――――

 数本の触手にランカが捕まった。

「!!――――」
「ランカ様!」
 副官の一人がランカに絡みついた触手を剣で切る!
 その触手をゆっくりと引っ込めるサルン。

「サルン様、お願いでございます!」
「うるさいね男には用はない」
 右手に力を込めるサルン。水色のエネルギー弾だろうか?右手の前で見る見る大きくなる。
 それを真上に上げる!

「来るぞ!」
 エルフの軍人たちはさっと構え、防御本能をとる。自分の周りに無数の触手を出して蓑虫のように囲うもの、翼のようなモノを背中から出して覆う者、様々だ。エルフはいろいろ出来るらしい。

「うせろ!――――」
 膨大なエネルギー弾が放たれた!





 ドッ――カッ――ンッ!!――――――



 ものすごい轟音と共に竜巻状にエネルギー弾が舞う!
 それにほぼすべてのエルフ軍人は巻き込まれる!


「フハハハハハッ! いい気味だ! 王族の手先ども!」
 みなかなり遠くに飛ばされたようだ。


 これでは確かに勝ち目はない。


 サルンが水晶のような中から出て、結界の外に来た。

「サ……サルン様」
 驚く軍人たち。
 残っているのは数人のエルフ軍人とランカだけ。あとはみな吹き飛ばされたのだ。

「君たちも早く帰りたまえ」
「サ……サルン様……」
 ランカが圧倒されている。今回が初めてだった。

 ここまでされたのは……今までは何もせず逃げていたサルン。虫の居所が悪かったのか?

「ランカ、君は来るんだ、たっぷりかわいがってあげるよ」
 明らかに年上のランカに対してまるで部下のように接する。その目に……魅入られている……エルフの女軍人。

「お願いです、サルン様、戻ってきて裁判を……」
「そして裁判もせずにうまく抹殺するつもりかい?」
 ハッとするランカ。


 読まれている。


「なぜ僕を殺しに来ない、王族どもは」
「サルン様……そのような言い方はいけません」
 立ったまま言い返すランカ。だが逃げようともしない。
「僕が犯罪行為をしているというならなぜ殺しに来ない……王族に犠牲者が出るのが嫌なんだろう」
「サルン様も無事にはすみませんよ」
 言い返すランカ。他の軍人達はかたずを飲んで見守っている。

「腰抜けの王族どもに負ける気はしない」
 信念を持って言っているような言い方だ。サルンがさらに近づく。防御本能が働いたランカ。背中から無数の触手が飛び出してきた。なるほど、触手や翼は身を守るためでもあるらしい。

 するとにやっと笑うサルン。

「ちょっとここで遊ばさせてもらおう」
 
と言って今度は光輝く触手がサルンから出てきた。


 
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