状況が変わった……

 しかし、マレイアスはいない。
「一つお願いがございます」
「ん? なんじゃ?」
 ブックルが聞く。
「あつかましいこととは思いますが……マレイアスという女騎士は絶対に助けなければならないのでしょうか?」
「…………出来れば……救ってほしい」
 ブックルの悲痛な願いだ。マメリアを助けるという目的は果たした。

 しかし……

「われわれも、犠牲者を出すつもりで全力をあげます。ゆえに巻き込む可能性があるのです」
「マレイアスを無視した方が、やりやすいというのじゃな?」
「……はい」
 ラブゼンははっきりと答えた。
「…………同意はできん……が、仕方ないというしかないのか」
 マレイアスは騎士として本当によくやってくれている。忠義も厚い。無下には出来ない。

「結果だけ……教えてくだされ」
「……わかりました」
 立ち上がるラブゼンとエルディーニ。気合がこもる。

 ――マレイアス……
 老人にとっても胸が痛い。マレイアスを見殺しにはしたくないのだ。だが、戦いが始まればそう言っていられるかどうか。

「失礼します、事が終われば、またご報告に伺います」
 一礼して出て行く二人。

 いよいよ30人ほどのダークエルフの王族とサルンの戦いが始まる。



「ふん、いい具合に来たか」
 ダークエルフの娘の報告を聞いて、笑うサルン。いよいよ王族が本気になってきた。
「逃げないの?」
「逃げる?」
 馬鹿にした言い方で言う。
「だって……」
 心配なミシェルン。今までは、アジトを変え転々としてきた。これも逃げていたからだ。もちろん、軍人クラスならサルンの相手ではなかったが。

「決着をつけようと思う。やっと、向こうは本気になったんだ、いずれはやらないといけないことだ」
「うん……」
「君たちは僕の結界の中にいればいい。それで事は済む」
 ゆっくりと立ち上がる美少年。コキコキときれいな身体を鳴らす。

「マレアイスを連れてきてくれ」
「え?」
「一緒に戦おうと思う、后になるんだからな」
「…………」
 ミシェルンは複雑だった。どうしてここまであの女騎士にこだわるのかがわからない。
 そんなにいい身体なのかと思う。

 
 ――近づいている……ふふふ。
 にやっと笑うサルン。美しい顔が、美しくゆがむ。口元が緩む。

 ――いよいよだね。
 一瞬、肩の筋肉が隆起した。身体から、青い光がちょっとだけ放たれた。

 サルンがいよいよ力を解放する時がきたのだ。
 邪悪なダークエルフの王になりつつある男が迫る……




「止まれ!」
 30人ほどの王族のみで構成された鎧の騎士と戦士たち。森の妖しい雰囲気に飲まれそうである。

 すさまじい気と殺気が交錯している。サルンがさらに結界を強くしているのだ。青白い光があたりを包んでいる。

 こちらも同じだ。青白い光がカプセルのように30人の騎士と戦士たちを包んでいる。王族は特殊なバリアと、再生能力を持つ。さらに触手による攻撃と、波動エネルギーによる魔法の玉のようなもので攻撃、防御をするのだ。

「こ、こんなに……強いなんて」
「ああ、予想以上だな」
 ラブゼンが妹に言う。ラゼは不思議な水晶玉を持っている。それと剣だ。これで戦うのだろうか?

 ――くそっ……この様子じゃ、とても……

 たちうち出来ないだろうというのが、予想だった。
「どうする? こちらから行くか?」
 エルディーニは決戦をしようと思っている。そして、兄を討つのは自分だと。
 大剣である、神聖エルフの剣を持っているエルディーニ。リーダーはラブゼンだが、将来の王はエルディーニだ。

「力を合わせて、全員で結界を破る! サルディーニの懐に潜り込まないとどうしようもない!」
 サルンの結界の中に入るには、こちらのパワーで押し切るしかない。中に入れば、お互いの結界バリアは意味はなくなる。そこからが本戦だ。

 みなみなが青白く光る。ただ一点に気を集中して……
 そこから破るつもりだ。

 と、その時!


「来たね」
 結界の森の中から少年と女騎士が、カプセル状の中で宙に浮いているではないか!

「サルディーニ!――」
 ラブゼンとエルディーニが叫んだ!

「ふん、お前達だけか……」
 あたりを見回すサルン。父上や他の老王族は一切いない。

「無責任なやつらめ」
 眉がひそむ。そのサルンを一斉ににらみつける、王族の青年と少年少女たち!

「サルディーニ! 王の、いや、王族の勅命により、貴様を殺害する!」
 ラブゼンは力強く言った。その言葉にサルンは笑いで返したのだった。
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