サルンのすぐ周りはカプセル状のような円形に包まれている。マレイアスも同じだ。こちらは無理やりカプセル状に入れられて宙に浮いているのだが。女騎士の服をちゃんと着ている。着ているというか無理やり着せられたらしい。

「僕のかわいい后よ、僕の戦いを見ておくんだ。それが妻としての勤めだ」
 なんという勝手な言い分。
「おい! ここから出せ! この馬鹿野郎!――」
 叫ぶマレイアス。もう、この嫌味な少年に飽き飽きしている。
「さあ! こい!」
 サルンの目に力がこもる!

 30人の王族たちが、なにやら一斉に唱え始めた……手を真上にあげている。その上には……

 すさまじい光を放った巨大な玉がそびえていた!
 サルンはそれを迎え撃つようだ! こちらも自分とマレイアスの前に光の壁をつくる!

「放てえええええええええええっ!――――」
 怒りをこめて巨大な玉がサルンとマレイアスめがけて突っ込んできた! 30人の王族の力を一気に込めた魔法の玉だ!

 マレイアスも道ずれだ! 最初からこうするつもりだったらしい!

「うわあああああああっ!――――」
 すさまじい光に目をつぶるマレイアス。こんなのくらったらひとたまりもない!
 しかし、サルンの光の壁は強力だった。

 巨大な玉が当たった瞬間だった、至光があたり全体を包む。サルンたちも飲まれそうになる!

 が……

 光が消えていくと……そこにはサルンとマレイアスが無傷でいたのだった。カプセル状の小さな結界も無事のようだ。

「…………だ、だめだ」
 ラブゼンが気を落とす。今の巨大な一撃がまったく効かない。
「次は僕の番だ、わが后よ、よく見ておくんだ」
 勝手にもう后にされている。その后はサルンをにらんでいるのだが。見守るどころか、隙あれば殺そうという女騎士。
 はがいいマレイアス。剣を抜いて、サルンに飛び掛りたい。
 だが、カプセル状に閉じ込められていては何もできない。
 サルンが今度は光の玉をつくる。お返しだ。美しい身体が、妖しく光った。
 さっと王族たちは、光の壁を作り始めた。この玉は連発できるものではないらしい。


 ――とにかく消耗戦に持っていくしかない。
 魔法の玉を使えば使うほど体力、精神力が減っていく。それを利用してサルンを倒すつもりなのだ。
 精神力、体力勝負の作戦!

 今度はサルンが放つ!


 ピシャアアアアアアッ!!――――
 光の渦が一気に王族達に向かっていく。
 それを迎え撃つ光の壁!

 当たった瞬間! すごい波動が王族達に迫った! ものすごい気だ! 吹き飛ばされそうになる!

 ――うわあああああっ!――

 すさまじい一撃に光の壁は砕け散った! かろうじて自分達は守られたが。だが、たった一人で30人の力が集まった光の壁を崩すとは……

 サルンは確信した。
 
 ――たいしたことはない。ここまで差がついているとはね。
 ニッと笑う。想像以上に自分は力を持ち始めている。

「ラブゼン、あ、兄上は……」
「だめだ、違いすぎる……」
 力の差に絶望する王族達。その時!

「みなさん! この水晶に力を入れて!」
 先頭にたって、水晶をかかげるラゼ。戦乙女のような格好でサルンに立ち向かう!
 彼女は水晶と剣で戦うタイプ。
 美女がサルンをにらむ。婚約者の兄にむかって……

「ラゼ……いい度胸だ。さすがはエルディーニが気に入っただけのことはある」
 笑うサルン。美しい顔がゆがむ!

 その間に水晶はすさまじい光と力をみなぎらせる。雷のような電磁波が水晶を包む!
 そして、エルディーニの婚約者は身体ごとサルンにぶつけていった!

 一瞬サルンが戸惑った。相手は自らを水晶ごとぶつける気なのだ!

 ――なっ……
 自己犠牲に近い攻撃にさっと防御力アップの印が出てくる。カプセルが赤くなり強度が増した。それはマレイアスのも同じ。
 さらに光の壁を作る! お構いなしに突っ込む戦乙女! その強さに怯むサルン!

 壁がやぶられた! さらにカプセルの中に水晶ごと突っ込まれた!

「うわあああっ!――」
 気がこもった水晶が腹にめり込んでいく! それを手で防御するサルン!

「うぐぐぐっ……」
 手で水晶をおしつける! 腹の中に入れて爆発させるつもりだ!そして神聖エルフの剣でとどめというところか?

 一進一退を繰り返す二人!

「おおおおおおっ!――」
 耐えるサルン! 少しずつ押し返す! すると戦乙女は次の手に打ってでた!

 片手で剣を持って……サルンの腕に突き刺したのだ!


「ぐわああああああああっ!――」
 顔がゆがむ少年! だが、次の瞬間!

 波動でつき返す!――

「きゃああああああああっ!――」
 すさまじい波動に吹き飛ばされるラゼ! そのまま地面に強烈に叩きつけられた! さっと自動的に身を守るカプセルが戦乙女の身体を包む。

 ――ああっ……
 黙ってみていたマレイアス。だが、何も出来ない。これじゃあ見守っているかのようだ。サルンを。

「ううっ……たいした……もんだね」
 ちょっと苦しむサルン。それを見てくそっと思うマレイアス。后はサルンの死を願っている。
 しかし、腕は再生を始めた。

「いまだ! 一気に行くぞ!」
 もう一度力を合わせて、巨大な玉を作り出す! サルンは弱っている! 今は自分の身体の再生で気がいっぱいだった。

 ――お、おのれ……
 身構えるサルン。それが今は精一杯!

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