領主の墓の前には、多くの衛兵がいる。領主ミレーユは、その中を二人で入っていく。本来なら、エルディーニは駄目なのだが。

 手をかざし、扉を開けるミレーユ。領主の墓が開いた。ここには、歴代領主が眠っているのだ。
 薄暗い雰囲気だ。洞窟といった感じがふさわしい。
 その墓の一番奥に神聖石碑がある。この石碑は、普段、触る事さえできないのがしきたりだった。

 そうやって、守ってきたのだろう。

「う〜ん、特別何も書いてない」
 正面には、歴代の領主、ここに眠るとだけ刻まれている。そこで裏を見る。

「ないですね、特に……」
 はあ〜と思うエルディーニ。
「こういう時は……」
 なんと石碑が動いた! さすが、ミレーユ、RPGを良く知っている。

「おお!」
 感心している王子。すると、動いた石碑のずれた部分に文字がある。


「これだわ!――」
 叫ぶお姉さん。




 後の世のためのここに記すものなり。

 重いこそ、弱さなり。重いこそ、弱点なり。重い人に悪魔は討ち滅ぼされるものなり。




 書かれている言葉はこうだった。これは、昔の文字で書かれてある。エルディーニは、読めなかったが、ミレーユは読めた。自治区の影文字なのだ。
 影文字とは、昔の文字。過去使われていた文字だ。今でも、一部のエルフだけが読める文字。

 もっとも、勉強すれば誰でも読めるようになる。ダークエルフの歴史学者などは、研究している者もいる。

「重い……」
「重い……これが弱点ってこと?」
 どうやらそのようだ。

「重りとかで、押しつぶせば……倒せるというのでしょうか?」
「う〜ん……」
 さすがに、そこまではわからない。

「とにかく、これが弱点ということでしょう。一回戻ってみなと相談したいのですが」
「ええ、そうね」

 お姉さんもここまでらしい。これ以上のことは、わからないようだ。
「エルディーニ……言うの?」
「……仕方ないでしょう。話さないわけには……衝撃でしょうけど」

 エルデンが、悪魔の殺戮レイプ魔だということを言えば……
 おどろく王族は多いはずだ。そして、われわれはその祖先……

 そう思いながら二人は、仲間の王族たちの元へと向かっていった……



 
 すべて、話したエルディーニ。おどろく王子王女達!

 信じられないことをエルディーニは持ってきたのだ。そりゃあ〜驚く。

 そして悲しむ……
 落ち着くまでには、時間が必要だった。

「これを……受け入れろというのか……」
 愕然とするラブゼン。
「今は、嘆いている場合ではないです」
「……それは、そうだが……」
「これが、一般の民に知れたら……大変なことになるぞ」
 別の王子が言う。
「ですから、秘密にしていただきたい」
 王族は、悪魔の殺戮者の子孫では、今後の国の統治に問題が生じることになる。

「王はこれを知ったら……さぞ、なげくだろうな」
「……ええ、多分」
「知るべきではなかった……」

 だが、知らなければサルディーニを倒すヒントは……だった。皮肉なものだ。

「自治区を作った意味も……われわれが習ってきたこととは、違うというわけか……」
「それよりも、重いが弱点とは、どういう意味か?」
「何かで押しつぶせというのだろう」
「それは何か?」
 議論が始まった。

 だが、結論はでない。

「光のエネルギーを重さに変えて……サルディーニにぶつけるとか……」
「無理だろう、あの力は、岩でも山でも、破壊できるはずだ。われわれでも出来るのだから」
「それと重い人とはなにか?」
 紛糾する議論。

 天を仰ぐエルディーニ。ここで、ある程度話をして、他の王族にも話さなければならない……


 気が重い仕事であった。

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