いきなり連れて行かれる少年。まるで拉致されるように……

 ――ほんとに来たよ……
 領主の墓に来た。衛兵ももちろん素通りだ。これでさらにこの方たちは本物と判断。

「これなんだが……」
 例の神聖石碑をみせる。薄暗い洞窟のような中で……

 サッと見るフィン。だが、例の影文字以外、周りには何もかかれていない。そこでずらした、石碑の方をよく調べてみた。

「う〜ん……あ?」
「どうした?」
「ここに記号がありますね」
 裏面の奥になにやら妙な文字がある。
「これは……え〜と」
 本を持ってきているようだ。訳す時の参考書のようなものらしい。

「ああ、これは影文字が、出来たばかりの頃の文字ですね。だったら……」
 サッサと心当たりのページをめくる。

「わかりました」
「別の意味があるのか?」
 ラゼが問う!
「ええ、ありますよ。え〜と……」


「これは、重いという部分だけが、別の意味になります」
「重い が?」
「ええ? この時代では、これは……想い、または、思いですね」
「想い?」
 聞き返すラゼ。

 ……
 …………

 想い人……



「想いこそ、弱さなり。想いこそ、弱点なり。想い人に悪魔は討ち滅ぼされるものなり」




「こういう意味になります」
「…………」
 一瞬、二人の女性の時が止まった……


 想い……人……

「意味はわかる?」
 ミレーユが聞く。
「ですから、想いが弱点だと……」
「それは、恋人とか……と言う意味か?」
 ラゼが期待して聞く!

「そうですね、想いとは、好きとか、恋……妻とかの代行表現ですから」
「妻? 妻……」


 ラゼが立ち上がった!


 ――そういえば……

 ――サルディーニは……


「わが后よ……」
「わが后よ……」


「僕の后だ……」


 ――マ……


 ――マレイ……アス……


「そうか! そうか! わかったぞ! ミレーユ!」
「え?」
 意味がわからない女領主。
「マレイアスだ! あのサルディーニを倒せるのは!――」

「マレイアスだ!!――――」
「ええ?」
 驚くミレーユ。フィンもびっくりだ!

 ――マレイアス? 誰だ? そ、それに……サルディーニって……あの亡くなったサルディーニ殿下?

 もう、少年には、意味がわからない。

「ミレーユ! すぐに私はこのことを……!」
 と、思った時……


 ――あっ……
 フィンを見るラゼ。

 フィンは……知ってしまった。


「あ、あの〜サルディーニ殿下は……」
「あああああっ!――」
 叫ぶラゼ。しゃべってしまった。しかも、サルディーニを倒せるとまで言ってしまった!

 サルディーニは、もうこの世にはいないことになっている。少なくとも、一般人にはそうだ。
「フィン、忘れてくれ。いまの言葉は?」
「え?」
 ますます不思議に思う。誰でもそう思うだろう。いきなり王族と女領主がやってきて、祭事以外は、入ってもいけない墓に案内され、さらに神聖石碑をしらべさせられた。

 その上、亡くなったはずのサルディーニを倒す?

 怪しいことこのうえない!

「あの〜どういうことです?」
 いかに相手が王族でも、引き下がらないフィン。これでは、納得できない。
「とにかく、今日のことは忘れるんだ!」
 怒るように言うラゼ。すると、ミレーユが……

「ラゼ、私からうまく言っておくから……あなたは」
「う、うん! 頼んだぞ! フィン君、礼は後だ、助かった、あなたはのおかげで!――」
「はあ〜」 
 今度は、礼を言われたフィン。サッサと出て行ったラゼ。

 すぐにカプセルで……サルディーニの元へ向かう!
 


 マレイアスの元へ向かうのだ!――――


「さ〜て……どうしましょうか?」
「え?」
 薄暗い領主の墓で……男女が二人きり……

「そういえば……あなたに礼をしないといけないのよね〜」
 お姉さんが、身体をみせつけるように、寄ってくる……その妖しい色気にたじたじのフィン。

「あ、あの……」
「大丈夫よ、やさしくするから」
「は?」 
 いきなり抱き寄せられた!

「わわっ!」 
 びっくりするフィン!
「お礼と口封じをかねて……この私、自ら……特別に相手をしてあげる」
 次の瞬間……二人はキスをしていた……


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