「うがああああああああああああっ!――――」
 背中を突かれ、叫ぶサルン!

「うごごごおおおおおおおおおっ!――」
 快楽から地獄へ一気に堕ちた気分だった。考えられない攻撃に戸惑い、悶え、狂う少年!

「父上!―― ちちうええええええええっ!――――」
 叫ぶエルディーニ!

 黒焦げになった老人の目が光っている。最後の……最後の力を振り絞った目であった。

 

 王としての……最後の……



「ぐわああああああああああっ!――――――」
 誰にやられたか、すぐに悟ったサルン! 背中を突かれたまま、後ろを振り向く!

「おのれええええええええええええっ!――――」
 怒る! 怒る少年王! この世にもういないと思われた的の逆襲に怒りを覚える!

 触手が伸びる! 王は一瞬にして弾き飛ばされた!

「くわああああああああああああっ!――――」
 心臓の近くに穴が開いたサルン。しかし、これでは息の根は止められない! 逆に怒りを力に変える!

「くたばれえええええええええええええっ!――――」
 すさまじい憎悪の光の玉が、一瞬にして黒焦げの男に向かっていった!

 瞬間だった……

 爆音とともに……すべてが飛び散った……

「父上! ちちうええええええええええええええっ!――――」
 泣きながら叫ぶエルディーニ!


 消えた……


 完全に消えた……生命の反応も……


 ダークエルフの王は……



 消滅したのだ。


「ちちうええええええええええええええええっ!――――」
 ダークエルフの王族は、簡単には死なない。再生能力も最高の力を持っている。倒せるとすれば、  神聖エルフの剣で、心臓と、頭を突くか、こなごなにするかだ。


 サルンは……それをやった。

 だが、まったく後悔はない。それどころか、当然だという雰囲気だ。
 その時、ラゼが動いた!


「うおおおおおおおおおおおっ!――――」
 散々なぶりものにされた戦乙女! 王を殺された怒りを胸に!
 今こそとばかりに、剣を振りかぶる!

 しかし、サルンは上空に逃げた……一気に天へ駆け上るように……


 ――くそっおおおおおおおおお!――
 にらむラゼ! 

 おびえるサルン。

 ――お、おのれ……

 まさか、ここで黒焦げの父がくるとは思っていなかった。虚を突かれた少年王。その少年をみつめるラゼ。はるか上空に逃げたらしい。追っていくという手もある。が……倒せる可能性はない。

 その時! マレイアスを見る!

 本来の目的のチャンスだ!
 カプセルの力が弱い!


 ――いまだ!――

 ラゼはマレイアスに向かって突進していった!――

 サルンの力が弱っている! ゆえにマレイアスのカプセルも弱い!
「うおっ!――」
 突撃するようにカプセルを割る! 守っていたカプセルが消滅した!――

「マレイアス!――――」
 叫ぶ戦乙女! 戦乙女が女騎士に叫ぶ! いきなり抱きつく! きつく抱きしめる!

「あなたなら倒せる! 倒せるんだ!――」
「え?」
 いきなり何を言うと思う女騎士? なにがなんだかわからない……

「あなたなら! 倒せるはずなんだ! サルディーニを!――」



「サルンを!――」
 生命のすべてを声に変えるような勢いで言うラゼ。そのすさまじき気迫に、凄みを覚えるマレイアス。


 ――倒せる? 私が?


「この剣を……取って……戦って! お願い!――――」
「…………」
 身体が……女騎士の身体が……手が……剣を握った……


 女騎士マレイアスは……剣をみつめる。
 そしてラゼを見つめる……


 意味はわからない、根拠もわからない。だが、もう説明している暇もない!


「わかった……」
 と一言だけ言うマレイアス。


 そして、はるか上空にいるはずのサルンを見る……
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