怒りと、憎しみが渦巻く、黒い欲望の渦……

 さっきより、さらに時間をかけるサルン。不可解な怒りは、頂点に達している。
 そして、じわじわと大きくなる天の玉は、無造作にマレイアスへめがけていった……


「うせろおおおおおおおおおっ!――――」
 不必要になった女性に対し、無情に突きつける少年王!
 その少年王に立ち向かう女騎士マレイアス!


 またもや一気に玉に飲み込まれる……今度は森一帯を覆うような大きさだ。さっきの比ではない!

「みんな! ふせろおおおおおおおおおおっ!――――」
 カプセルでその場でみなが集まって身を守る王族たち! 
 上空に巨大な力が、宿っていくのはもう気づいていた。
 ランカやミシェルンも洞窟に避難する。

 今度はさらにでかい!

 そう感じるみんな……


 そして、巨大な玉はそのまま地面に激突した!――

 一瞬にして、森を覆った黒い渦。すべてを飲み込むように……乱暴に包み込む!
 木々がみな倒されていく、台風の数十倍あるかのような爆風が核のように広がっていくのだ!

 巨大な岩さえも砕け散る衝撃!――
 そして竜巻のようにすべての物を上空へ押し上げていく!
 さらに木々同士が、めちゃくちゃにぶつかり、へしゃみ、砕け散る!

 最後に巨大な轟音……

 
 もはや女騎士の姿もまったく見えない。
 辺り一面は焼け野原だ。永遠に続くかのような焼け野原……

 サルンは、汗をかいている。満たされているような汗だ。
 ゆっくりと降りていく少年。切られた腕を気にしながら。
 気配を探っている。だが、本来ならそういうことをする必要はないはずだ。

 もう終わったはずである。
 それでも探る……なぜ? 自分でもわからないサルン。

 それを認めたくないサルン。


 ピクッと……サルンの表情が変わった。


 (…………ううっ……うっ……)
 続いてそれを声に出す。
「ううっ……うううっ……消えない……消えないだと?」


 目が周りを探す。しかし、この行為も、する必要はないはずの行為のはずだ。
 不必要なはずなのだ。


 いや、そうでなければいけないはずなのだ。

 表情が変わるサルン。犬のように犬歯を出して、威嚇する


 ……誰に? それさえも本当は認めたくないサルン。

「どこだ……どこだああああああああっ!――――」
 存在してはならない気配が……ある。震える少年。

「出て来い……」
 命令するサルン。
「でてこい! でてくるんだ!――――」

 つばを飲んだ少年……そして……



「でてこい! マレイアス!――――マレイアス!――――」
 叫ぶ少年! あきらかに動揺している!

 すると煙が充満している中から……人影がみえる。王族たちの者ではない。
 ボロボロの赤いドレス……

 それを見たサルン。
 それを認めたくない少年王。
 それを消したいサルディーニ。
 
 その消したい人物がゆっくりとサルンに近づいてきた……

 黒い渦を身にまとって……

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