焦りと憎しみ、それと驚愕……いま、まさにサルンは、追い詰められ始めた……

 信じられないことを現実として認めなければならない辛さ。それが、この少年につきつけられている。
 構えるサルン……


 もはや、正攻法では無理。そう考えた少年……その少年に女騎士がゆっくりと向かう。赤いドレスを着た女騎士マレイアス……

 マレイアスもこの信じられない状況はもう理解している。なぜ、こうなるのかはもちろんわからない。

 わからないけど、今はそんなことどうでもいいのだ!

「サルン、私はあなたを倒す!」
 初めて強気の言葉がでた。その言葉は少年王をさらに危機に落とす……

「ふ、ふふふ……ふははは……」
 笑うサルン。しかし、この笑いは余裕の笑いじゃない。あきらかに動揺している笑いだ。

「潔く裁きを受けろ」
「裁き? 裁きだって?」
 黄色い声で言うサルン。甲高いきつい声だ。サルンが狂い始めた……

「お前はこの剣で終わる運命なんだ」
「あはははは!―― 人間の女騎士が僕に説教かい!」
 狂気の目で見るサルン。汗がどっと出た。牙をむく感情。

 今のマレイアスと王族達に、希望が見え始めた……

「そのくだらない希望……すぐに消してやるよ」
 サルンが行動に出た……

 すごい勢いでラゼに向かう! 王族達は身を寄せあっていた。その中央に激突するように向かうサルン!

「うぐわっ!――――」
 ラブゼンが立ちふさがったが、弾き飛ばされる! そして、ラゼを無理やり抱きしめると、気を一気に爆風に変えた!


 弾き飛ばされるラブゼンたち! 体をカプセルで守っていただけで精一杯だった。肉体はもう戦う力はない。


「離せ!――サルディーニ」
 もがくラゼ!
「マレイアス、剣を捨てろ……」
「なに?」
 人質作戦か? 以前、それを卑怯とラゼに言ったのはサルンだが。


 そのサルンが……

「捨てろって……」
 目つきが危ない。笑いながら言っている。追い詰められた権力者の最後の抵抗のようだ。

「…………」
 黙っている女騎士。

「捨てんと殺すぞ! この女を!――――」
 どす黒い声で言う。こんな汚い声を出すサルンは始めてだ。

「お前……以前そういうの卑怯だと言っていなかったか?」
「あ? そんなこと知るか! うふふ……ははは」
 とうとう切れた少年。

「そうか……」
 と言ってマレイアスは捨てた……

「だめよ! マレイアス! 剣を離しては! ぐはあああああっ!――」
 首を絞められたラゼ。少年が確かめるように絞める。さらに爪を伸ばして血が出るかどうかを確かめる。

 思うように手が動く……爪を軽く肉に沈める。血が出た。


 そうだ、これがほんとうだ。


 これがほんとうだ……なのに……

 あの女騎士は……


「マレイアス……」
 ラゼが哀愁の目で見ている。サッとサルンは触手を伸ばして巻きつけ、それを拾った……

 手元に神聖エルフの剣が手に入った……


 それを見てにやっと笑うサルン。
「じっとしてるんだ……マレイアス」
「…………」
「いいな、じっとしてろよ、動けばラゼを殺す」
 そういうと下半身からペニスをニョキッと出す。それを枝分かれにしたサルン。


 こんなことも出来るらしい。


「くはっ!――」
 ラゼが悲鳴をあげる! 股に深く突き刺さる! エネルギーの搾取が始まった。


 そしてもう一本のペニスは……
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