女騎士マレイアス。あのサルンとの死闘で生き残った女性だ。
 今やダークエルフの国では、英雄扱いの女性。
 ダークエルフの問題児、サルンことサルディーニを死闘の末、見事に葬った。
 触手とレイプ、さらに焦らしの徹底の責めに、
 マレアイスや他の女性は悶絶しながら……
 しかし、最後はサルンこと、サルディーニを倒したのだ。壮絶な最後で。

 その女性と一緒に戦った女軍人が一人いた。

 ランカである。最近階級が大尉になった。

 ランカは、サルンとの戦いに参加した女性の一人。昔は、サルンの教育係でもあった。
 しかし、あの戦いで、その教育した王子との結末は、非情に後味の悪いものだった。
 あれから一時、ランカもひどく落ち込んだのだ。 
 そして、サルンからの凌辱、そしてインリのアナルへの……

 責め……
 考えただけでもゾッとする。

 特に、インリという少女から受けた攻めだけは、考えるだけで屈辱が増した。
 サルンよりもひどく印象に残っている。あの時の少女の笑うサドの目が忘れられない。

 だが、その少女はもう……この世にはいない。
 
 そのランカがダークエルフの王に呼ばれていた。ふりふりと腰を動かしながら、廊下を歩いていく。相変わらずの抜群プロポーション。長身のスラッとした体系は、男の心をそそる身体だ。

 インリはこの身体を……


 ――何かしら? ほんと。

 長身で、長髪のランカ。大人の女性といった感じがよく似合う。ダークエルフ特有の長い耳は、さらに大人という感じをそそらされるのにうってつけだ。顔立ちは非情に強気。 軍人としても立派な顔立ち。

 サルンが死んでもう数年になる。相変わらずマレイアスとは、たまに会っているようだ。
 今やラブラブのレズ関係。

 そのランカが急に呼ばれた。なにやら急ぎの勤めだという。

 ――う〜ん
 正直わからない長身娘。あれからランカは、地方に転勤、赴任していた。
 ダークエルフのはるか外れに位置するところで一軍人としている。
 地方に赴任してもう数年になる。

 なぜ呼ばれたかがわからない。

 地方に赴任するのを希望したのは、ランカ自身だった。
 中央で軍人として活躍していたのだが、あの一件以来、正直……疲れたのだ。
 そこで中央から離れ、あえて地方での暮らしに目を向けた。自ら、出世街道を外れることを要求したランカ。王や王族もランカの受けた心の傷を考慮し、配慮したらしい。

 また、その方が都合がよかったということもある。あれからマレアイスとは、秘密の関係を保持している。実は、場所的にも近いのだ。まあ、ほとんどがそれが目的だったが。

 だが、軍人に休息はない。

 呼ばれれば、命令は受けなければならない。それが勤めだ。
 ランカは、ゆっくりと、王の謁見の間へ向かった。


 
 謁見の間へ入ると、りりしい青年王が一人いる。

 エルディーニだ。あれから父の後を継いだ。立派な顔立ちになっている。
 兄、サルディーニとの戦いで成長したのだろう。今や、あのラゼを王妃に迎え、たくましくなった。王冠も似合う。

「よく来たな」
 笑うエルディーニ王。
「はい」
 久しぶりの王の顔だ。ランカにとっては、あの一件以来だった。

「みなの者、下がれ。二人だけで話がある」
 側近を下がらせる王。少し顔が険しい。

 ――何かあったわね。これは。

 そして、その何かが、自分に関係あるらしい。

「ミルゼバはどうだ?」
「はい、よいところです」
 ランカがいま赴任している場所はミルゼバという。そこの地方軍の連隊長をしている。

「そうか……私は行ったことがないのでな。なんともいえないのだが……」
「あの……」
 世間話よりも、用が聞きたい女軍人。
「うむ、用件を言おう」
 エルディーニがちょっと真剣になる。王は詳細を述べ始めた。


 
「そなたも知ってのとおり、あの事件の関係者、つまりミシェルン以下の者たちはみな死刑に処した」
「はい」
「その時、死体も焼却したのは知っているな」
「はい」
 ダークエルフは人間と同じように死ぬと火葬にされる。さらに、エルフの場合は、粉々に粉砕される場合がある。

 それは罪人の場合だ。

「たしか、罪人扱いで粉砕して埋められたはずでは……」
「そうだ、ただ一人除いてな」
「…………」

 死刑級の重罪の場合、死体は焼かれ、粉砕され、粉々にされる。そして罪人の墓に葬られるのだ。例え死んでも、その粉砕した骨を罪人の墓に入れて、罰を与える。一般のエルフとは区別する。死してもお前は犯罪者だと仕立て上げる。

 それがダークエルフの考え方だった。

 ただ、たった一人の娘だけは……別。

「インリだけは、それを免れた」
「年齢が若いという理由だったと聞いています」
「うむ」
 極秘の裁判で、強引に死刑判決。本来なら全員が、粉末にされるはずだったらしい。

「あの少女の年齢、さらに関与も低いという事で、死刑にはしたが、死体は罪人扱いではなく、普通の名も亡きエルフという形で葬った」
 火葬され、骨になったインリ。そこから粉末にはされなかったのだ。されたエルフたちはみな戦犯扱い。
 インリだけは納骨になった。 
 普通のダークエルフの、名も亡き死人ということにしたのだ。

 ふ〜っとため息をつく王。

「ところがだ、その墓が何者かに荒らされたらしい」
「荒らされた?」
「墓泥棒のようなのだがな」

 墓泥棒?

「インリだけは、戦犯扱いにはせず、名も亡き墓として一般と同じように葬った。それがせめてもの減刑という意味でな。ところがその墓が荒らされたのだ」
 顔が少し暗くなるエルディーニ王。

「そして、それからなのだ。インリを見たものがいるのは」
「え?」


 ええ?!――
 見た? インリを?

 まさか? 骸骨になってあらわれたとでもいうのか?

「し、しかし、インリは……」
 死刑にされたのだ、生きてはいないはず。

「そこがわからぬ。さらに……その者がこう言ったという」
 重い口を開く王。

「ランカはどこ……と」

 ――ええ?
 死んだはずのエルフが生きている?
 さらにランカを……
 
 ゾッとするランカ。あの忌まわしい記憶が……
 あの屈辱の浣腸と排泄責めが蘇る……

「本物でないなら、ランカ、そなたを探すことがあるのだろうか?」
 問いかける王。
「…………」
 とても答えられないランカ。確かにそうだ。

「とにかく、今回の一件はまったく不可解なのだ」
「…………」
 黙って聞いている女軍人。

「そこでだ、念のため、そなたにここにいて貰おうかと思っている」
「ここに?」
「うむ」
 どうやらランカを保護したいらしい。

 王が言うには、墓泥棒が骸骨を持っていった。それからインリに似た人物が、ランカはどこと聞いている……不気味だ。どういうことかはわからないが。
 何か見えない力が働いていると思っているようだ。
 だから、ここで保護したいと。

 しかし、ランカは納得できない。

「私は軍人です、ましてや王に保護されるというのは……」
「ふふふ、そう言うと思った。筋違いと言いたいのだろう?」
「はい!」
 インリかどうかはわからないが、関係があるなら自ら捜索したいランカ。

「……では、その者が何者か、自らも動きたいというのだな?」
「もちろんです」

 仕方ないという顔の王。

「わかった、本当はここで保護するつもりだったのだが……」
「そのような心配は無用と存じます。私は軍人です」
 ランカの目が強く光る。

「うむ、よく言った。そなたに百名ほどの兵を与える。そして、今回の事件を解決してほしいのだ。」
 王が続けて言う。

「本来なら大規模な捜索もしたい。が、知ってのとおり、サルンとミシェルンの真実はすべて極秘だ。わが……王族の祖先のこともな」
「はい」
 それは承知しているランカ。

「だから、今回は極秘で動いてもらう。いろいろと大変だろうが」
「構いません、そういう任務ほど燃えるものでございます」
 きっぱり言うランカ。さすがは女軍人。

「どういうことかはまったく意味がわからない。十分に気をつけて行くのだぞ」
「はい」
 あのインリ絡みとなれば、ランカも黙ってはいられない。

 にしても……あのインリが?

 焼かれたエルフが蘇る?
 骨になったエルフが……?
 そんなことあるの? と思うランカ。

 こうしてランカの捜索が始まったのだ。
 そして、新たな物語も始まった……

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