一方のランカ。こちらでは、死人返りの情報を得るため、人間の国に移動していた。
 ダークエルフの国から離れること数百キロの位置にある国だ。マレイアスがいる国とはまた別の国である。

 その名はエリン皇国。人間の国。ウッズの生まれ故郷でもある。

「疲れるわね」
 もう10日になるランカ御一行。ランカと数名の部下、それにツエペリ霊媒師。
 森の街道をテクテクと馬に乗って移動中。
「こ、腰が……」
「大丈夫ですか? 先生」
 こちらも先生と呼ばれている。ランカが心配そうに見ている。馬に乗っている老が腰の痛みを訴えている。ランカが馬から降りて近寄る。

「ちょ、ちょっとよろしいか?」
 そう言ってランカにもう少し近寄るように促す。
 ちょっと考えるランカだったが……近寄る女軍人。

 すると……

「あんっ!――」
 馬から落ちるようにランカに抱きついた。
「すまんのう〜」
 老人の顔が巨乳にぶつかる。あのサルンにいいようにされたおっぱいだ。長身のスレンダーに、非常によく似合うおっぱい。

 ――こ、これは……
 確信犯である。

「降りたらさっさと離れてください」
 地面に足をつけてピンピン立てる状態なのに、いつまでもランカの胸にくっついているご老人。

 ――ようやる……
 部下の一人も呆れ顔だ。

「ふぉふぉ……わざとではないぞ。かんべんしておくれ」
 もう三回目だ。こんな感じで楽しんでいるのは。
「腰はピンピンしているようですが」
「うん?」
 そう言えば、腰が痛いのではなかったか?

「おお、直っている」
「…………そうですか」
 ランカも、もう何も言わない。このわざとらしい老人には……

 本来ならぶんなぐりたいのだが、大事な霊媒師だ。そうもいかない。この老人の紹介がないと、話が進まないからだ。

 それにこの老人……結構有名人なのである。

「さて……行きましょう」
 その時だった。

 ビュッという激しい音とともに触手群が一斉に群がってくる!

「うわあああっ!――」
 部下達が反撃する! こちらも背中から触手を出して、防御。さらに剣を構えた!

「何者!――」
 ランカが叫ぶ!

「お〜ほほほっ……」
 高い声で笑う少女のようなタイプがポツンといる。

 ――あ……あああっ!――

 まさしく……それはインリであった。

 ――イ、インリ? あ、あのインリ……

「待っていたわよランカ」
「……お、お前は……」
 見ると、前回とは違って耳が長い。明らかにダークエルフの特徴だ。
 それに魔術師のような服装をしている。さらに、右手に攻撃型ロッドを持っている。

 
 ランカの長い耳がピクッと動く。

「ランカ、あなたは私のおもちゃになるのよ」
「なに?」
 ゾッとする女軍人。あの忌まわしき記憶が……

「私は生まれ変わったのよ、あなたを……調教するために!――」
 調教するために生まれ変わった? 

 すごい理由だ。

「ほ、本物か? 本物なのか!――」
 もはや疑いようがない状況だった。
「今日から私がご主人さまよ」
「ふざけるなあああっ!――」
 ランカが剣を持って飛び掛る!

 サッと身を引く。さらに触手を出した! ランカも触手で応戦する。
 しかし、明らかに一般のダークエルフが出せる触手の数をはるかに超えている!

 ――こ、これは……
 さらに攻撃型ロッドを振り回す。それに合わせるように触手たちが一斉に動き出した!

 ――どういうこと?
 こんなことは一般のダークエルフにはできない。インリも盗賊娘だったとはいえ、ただの一般のエルフだ。

「拉致してあげる!――」
「こ、このおおおおおおおおっ!――」
 ふざけた言い回しだ。切れたランカ。バッサバッサと触手を切り散らしていく!

「うっ……」
 得意気にロッドを振り回していたインリだが、まさかのランカの反撃にちょっと戸惑う。

 ――ちょっと、これを凌げるというの?

 この数の触手を平気で裁いていけることに驚く。
 ランカという女軍人を甘く見ていたようだ。
「や、やば……」
 ジリジリ押されてきたインリ。これじゃあ捕まえるどころじゃない。
 さらに近寄るランカ!

「うわ!――」
 その時、別の方向から触手がランカに向けて飛び掛る!

 ライファンだ! あのライファンもいる!――

「なっ?」
 いきなりのご登場ライファン。

「インリ、大丈夫?」
「う、うん……」
 拉致るどころか、逆に捕まえられそうなインリだったが、これで逆転した。数人の部下は、インリの出した触手の勝ち。身動き取れない。さらに老人は身体をまるめて、バリアをしているようだ。周りにはうじゃうじゃと触手が群がる。

「ふ〜ん、この女がランカ」
 これがインリのいうランカかと見ているライファン。長身のルックスは、かっこいい女という言葉がよく似合う。自分よりも背は高そうだ。

「誰だ!」
「ライファンっていうのよ、今後ともよろしく」
 クスッと笑うお姉さん。こちらも魔術師のような格好。
 その笑いに怒りを覚えるランカ。

「インリ、生きていたというの?」
「うふふ、蘇ったのよ。わたしは……あなたをペットにするためにね!」
 背筋が凍る……なんという悪夢の展開。

「く、くそ……」
 構えるランカ。触手と触手がやりあっている。それにさらにライファンのが参戦した!

「うわああああああっ!――」
 一気に撒きつく触手たち。とうとうランカの触手の防衛側が負けた……

 敗北の代償は……

「あはははっ……いい格好ね」
 四肢を捕まえられた女軍人。

「やったわ!――」
「は、離せ!――」
 もがくランカ。ウニョウニョと動く触手が絡み付いてくる。それにしてもインリはいったいどうしたというのだろう。あれから変化があったのだろうか?

 それに、冷静に見てみると……

 ――か、カプセル?

 宙に浮いているのはまさしくあのカプセル。
 王族や一部の認められた者しか出来ない行為のはず……

「さあ〜一緒に来なさい」
 立ったまま、抵抗しているランカ。そのランカの四肢をしっかりと触手が食らいついている。ググッと力を入れる女軍人。

「来るのよ! ランカ!」
 笑いながら引っ張る。しかし、びくともしない。捕まえられても引っ張るまでの力がないようだ。

 ――よ〜し。その気なら……

 背中からもう一本触手が伸びる。
「うわ!――」
 そいつは軍服の下半身の股に伸びた!

 ビリリッという音と共に、服が破け飛ぶ。その下にはガーターがあらわれたのだ。ガーターとは、ショーツの後に履くガードタイプのパンツのこと。

「いいかっこじゃない。さあ〜これからは楽しいわよ」
「やめろ!――」
 破けた服の間から、這うように奥に入っていく。そしてガードの隙間からこじ開けるように入っていくのだ。

「う……はあっ!――」
 一瞬、寒気がしたランカ。サルンとの戦いの記憶が……

「いい声出すじゃない。ペットになったら毎日その声だしなさいな」
「馬鹿をいうな!――」
 抵抗するが、徐々に嫌な想いを認めないといけなくなる。奥に入っていく……

 柔らかい秘密の奥に……

 とうとう引きずりこまれる。うにょうにょと動く触手は、膣の穴に這い回り、昔の嫌な体験をよみがえらせる……
「うはっ!――」
 よがる女軍人!

「ペットになる心構えを教えてあげる」
「ふ、ふざけ……くはっ!――」
 奥深く、内部に進入した触手が、肉をしつこく責めて、快楽を呼び起こす。

「うわあああああっ!――」
「ほらほらコッチにいらっしゃいな」
 クスクスと笑うインリ。本当に楽しそうだ。

 ――この子……本気でランカが好きなのね。
 ライファンが横で不思議そうに見る。

「あっ?」 
 そのライファンが、触手の塊がうごめいているのを気にかけた。
 あのツエペリ老人を襲っている触手群だ。

 ――あっ……
 目を大きく開くライファン。

 触手が覆っている大きさがどんどん膨らんでくる……

「ちょ、ちょっと……」
 それはさらに大きく……まるで爆発するように……

「うわああああああああっ!――」
 ライファンが悲鳴をあげた! インリもこの異常な状況に気付く!

 触手群の隙間から、虹色の光が漏れる。それは全体に広がっていった!

 次の瞬間……

 大爆発!

 ドーンという音と共に、触手が飛び散っていく……

「……ツ……ツエペリ殿」
 ランカがその方向を見る。
 そこには年老いた老人の力強い姿があった……


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