「ほほほっ……これはまた威勢のいい女たちじゃ」
 微笑むツエペリ。

「なによ、うずくまってたんじゃないの?」
 邪魔をされたインリ。気に入らないようだ。ライファンは、ツエペリと言ったランカの言葉を気にしている。

 ――ツエペリ?

「おぬし達……死人返りの邪法で蘇った者じゃな?」
「……だからなに?」
 ライファンが言い返した。図星でも驚きはしない。

「誰じゃ、その術を使った者は」
「うるさいわね!――」
 インリが新たに触手群を老人に向ける! だが、老人はひるまない!

 ゆっくりと片手を前に出して、そこから光を集めた……

 その光が7色に鮮やかに放たれる!

「きゃああああああああっ!――」
 一瞬にして触手群が粉々に砕け散った。

 それを見て驚くランカ。

 ――こ、これが……霊媒師の力?
 結構な技だ。ランカと戦えばおそらく……

「逃げるわよ、インリ」
「え?」
 逃げる? ペットを目の前にして?

「目をつぶって!――」
 叫ぶライファン!――

 すると、真上にまばゆい光があらわれる。
 それはグングン辺りを飲み込むような大きさになる!


「うわ!――」
 ランカがあまりのまぶしさに叫んだ!

 数分は続いたであろうまばゆい光……その間、ランカ側は身動きさえとれなかった。



「逃げられたの」
「ええ……」
 解放されたランカ。もうクタクタだ。
「お前たち、大丈夫?」
 触手に拘束され、気絶していた部下たち。

「は、はい」
 申し訳なさそうだ。

「インリという者は、魔術師なのでしょうか?」
 部下が聞く。
「いや、そんなはずはない」
 あれはただの盗娘のはず……

 すると老人が言う。
「ロッドで触手を操っておったの。あれはダークエルフでも魔術師の技を取得できないと出来ない技じゃ。それにカプセル移動までしておる」
 険しい顔になるツエペリ老人。

「魔術師? まさか……」
 驚くランカ。魔術師の資格などインリは持っていないはずだ。
 さらにあのカプセル移動まで……

「魔術師になれるのは、王族の許可を貰ったごく限られたエルフだけのはず。なぜあの者たちは……」
「……気になりますね」
 ランカも疑問に思っている。ただの盗賊娘だったインリがなぜ。許可など貰えるはずもない。

「死人返りの影響でしょうか?」
「う〜む」
 老人も考えている。

「ランカ殿、これは少々やっかいなことになりそうじゃ。急ごう」
「はい」
 立ち上がったランカ。すると……

「ほほう……」
 下半身が丸見えだ。見逃さないツエペリ先生。

「せ、先生……」
 さっと隠す。まったくいい根性している爺だ。

 ――これさえなければ……
 ランカは心でため息をつく。

 だが、羞恥に浸っている暇はない。急いで人間界で、情報収集をしないと……
 あきらかに、ランカたちは事の重大さに気づいたのだ。

 ランカたちは、急ピッチで目的地に向かうのだった。



「くそ〜」
 アジトに戻ってきたライファンとインリ。ご不満はもちろん少女の方だ。
「あの老人……霊媒師よ」
「霊媒師? 霊媒師って……魔術師とかの一派のあれ?」
「ええ……」

 ライファンは気になっていた。だから逃げたのだ。

「どうしてランカの側にあんなのがいるのかしら?」
「そういえば……」 
 インリは、ランカが死人返りの調査をしているとはまだ知らない。

「ツエペリといえば、霊媒師で有名な老人よ」
「あ、私もそういえば、聞いたことがある」
 インリもツエペリという言葉に反応したようだ。

「死人返りって言ってたわ。どうやら……感づかれたみたいね」
「いいんじゃない? どうせわかることだもの」
 それでは困るというのがライファンの本音だ。さっきは強がったが。

 ――インリはのん気ね

 自分達が死人返りで生き返ったということがわかれば、当然対策を打ってくる。
 インリにはそこまで頭が回らないらしい。ランカをどうやって手に入れるかだけしか、頭にないようだ。

「相手が魔術師や霊媒師なら、こちらももっと強くならないと」
「…………」
 それで解決するわけではないと、言いたいお姉さん。

「いつ帰ってきたんだ?」
「あ、先生!」
 インリがにこやかに笑う。どうやら出かけていたらしい。ランカ獲得のために二人は留守にしていた。その間は、自分が出かけないといけない。
 といっても一人で外出するのも慎重にだが。

「先生、お話したいことが……」
「ん? なに?」
「私達をさあ〜 もっと強くしてほしいのよ」
 甘えた声で言うインリ。

「違うの、そういうことじゃなくて……」
 ライファンが言い返す。
「おいおい、なんだよ」
 話がかみ合わないのでびっくりしている少年先生。

 ライファンが落ち着いて話を始めた。
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